日本縦断の旅から帰って、しばらくしてから腰痛と肩痛が出現。 日課のウォーキングもできずにソファーに転がって、暇つぶしに本を読む毎日となった12月だった。 振り返ってみると、定年退職してから8ヶ月が経ち、何もせずにのんびりと本を読むという生活がひと月以上続いたのは人生初めての経験ではないだろうか。 予てから定年後の晴耕雨読の生活に憧れていたが、根が貧乏性にできているのか、夢の生活を手に入れたというのに、暇を持て余して退屈な状態にあえいでいる自分がいる。 我がままなのである。 今年はそんな我がままの自分をさらに昇華させ、“どこ吹く風”で生きようと思う。 好きなように、やりたいことをやる…そんな一年になればいい。 【2020年12月の読書データ】読んだ本の数:16 読んだページ数:3619 ナイス数:47 本棚の本の 感想人の本棚を覗きたいという好奇心に駆られる私には、期待外れ。読書家の圧倒的な本棚写真が見たかった。本の雑誌『絶景本棚』のような内容を期待していたので…。 “横文字職業”の人が必ずしも読書家であるとは思わないが、本棚に並んだ背表紙を見ても意外性が少なかったのには驚いた。クリエィティブな人たちはもっと違う分野の本を読んでいると思っていたので、ちょっと残念。 読了日:12月01日 著者: 赤澤かおり 辺境メシ ヤバそうだから食べてみた (文春文庫)の 感想ゲテモノ料理がずらりと並ぶ。日本人にとってはどれも気色悪くておぞましい。さすがにヒトの胎盤はいただけない。倫理的にもこれはどうかな…。 著者の冒険心と、胃腸が弱いと言いながらのチャレンジ精神には敬意を表します。 読了日:12月01日 著者: 高野 秀行 絶景本棚2の 感想前作と比べて、本の背表紙(書名)が見え難いのが残念。写真のアングルも全景がもっと見たかった。図書館並みの夢枕獏氏の書斎には圧倒されました。 読了日:12月02日 著者: 本の雑誌社 10分あれば書店に行きなさい (メディアファクトリー新書)読了日:12月04日 著者: 齋藤 孝 読書力 (岩波新書)の 感想新書を50冊読め…という学生に果たす宿題は、いかがなものかな。 現実にはしょーもない内容の新書も多くあり、読書習慣を身に付ける手段としてなら新書にこだわらなくてもいいかと思う。活字中毒とまではいかなくても、読書習慣は一長一短で身に付くものではない。本好きになるのはその人の生活環境や人生観により左右されるので、無理にきっかけを与えるものではなく、自然に身に付くものであると思いたい。 読了日:12月06日 著者: 齋藤 孝 できる人の書斎術 (新潮新書)読了日:12月07日 著者: 西山 昭彦,中塚 千恵 津山三十人殺し 七十六年目の真実: 空前絶後の惨劇と抹殺された記録の 感想筑波昭著『津山三十人殺し』の関連作として読了。この作品で著者は筑波氏の著作の矛盾と、新たに発掘された真実から新解釈を記している。昭和13年に起こった空前絶後のこの事件にはまだまだ謎が多く、これを追う著者の執念が今後の活動に結実することを期待したい。 読了日:12月10日 著者: 石川 清 本のおかわりもう一冊 (桜庭一樹読書日記)の 感想2010年~11年の読書日記。好きなシリーズなので、ずっと読んでいる。今回もマーカー片手に気になる本をチェック。引っかかったのは2冊。うーん、私の小説離れは一段と進んだようだ。そろそろこのシリーズともお別れかな。 読了日:12月11日 著者: 桜庭 一樹 やっぱり書斎がほしい―知的創造空間の設計 (講談社カルチャーブックス)の 感想我が家の書斎作りの参考にしたくて購入。1992年刊行なので内容が古く、正直、あまり参考にならなかった。『読む・書く・考える』この3つの欲求を満たす空間を=書斎として定義されているのには共感できるが、更に『作る』があっても良いかも。うーん、これだと書斎ではなく、秘密基地のような趣味的空間になってしまうかな…。 読了日:12月12日 著者: 三輪 正弘,西村 俊一 万引き老人の 感想読み進むのが辛くなってしまった。コロッケ1個盗んだ老人の話は、読むに堪えない。一歩間違えば、誰もが貧困に陥る世の中。 そろそろ老人の域に差し掛かった我が身を重ねてみれば、“絶望老後”がすぐそこまで迫っていることを、改めて感じさせてくれた作品だった。 読了日:12月14日 著者: 伊東 ゆう 不良老年のすすめ (集英社文庫)の 感想著者の作品は好きだが、エッセイは今一つかな。 この人はノンフィクションにその真価をみる。 不良老年という定義がよく分からなかったが、自身の個をぶれずに持ち続けるというこだわりには共感できた。 読了日:12月17日 著者: 下重 暁子 夜啼きの森 (角川ホラー文庫)の 感想昭和13年に起こった津山三十人殺しは、多くの小説やノンフィクションのモチーフとして上梓されているが、著者の一連の小説の根底を成す岡山に残る土俗信仰を背景に、新たな側面から描かれた完成度はさすが。 残忍な殺戮描写がなくとも、事件の恐ろしさは十分に伝わったと思う。 読了日:12月17日 著者: 岩井 志麻子 ミステリーの系譜 (中公文庫)の 感想このところ追っかけている『津山三十人殺し』の関連資料として読了。 『闇に駆ける猟銃』は事件後30年ほどしか経っていない頃に著書が取材して書いているので、生存者からの聞き取りもあって、その後多く出された関連本のなかでも資料的価値は高い。 事件を知る上でも必読の書であると思う。 読了日:12月20日 著者: 松本 清張 書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクトの 感想『絶景本棚』のグラビアで圧倒的な画像に魅せられ、この書庫が作られるに至った本書の存在を知った。わずか8坪の土地に、機能的で洗練された奇抜なデザインの書庫が、才能溢れる建築家とのコラボで作られたことに今さらながらに驚きました。機会があれば現地に立ち寄り、ぜひ拝みたいと思います。 読了日:12月20日 著者: 松原隆一郎,堀部安嗣 東海道徒歩38日間ひとり旅(小学館文庫)の 感想写真家の著者が58歳の1992年の夏にチャレンジしたルポ。旧街道の東海道を忠実には歩いていないが、大阪から東京まで歩きとおすという強い信念のもと、リタイヤせずに炎天下の道を徒歩で旅したことに敬意を表したい。私もコロナ禍の今年、94日間をかけて北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断したが、一歩間違えば熱中症になってしまう、炎天下の歩きの辛さは経験者として理解できる。足の痛み、マメの辛さ、なんでこんなことしているんだろうという、やるせない雑念…それを克服してのゴールの達成感が何よりも共感できた。 読了日:12月23日 著者: 糸川耀史 シェルパ斉藤の遊歩見聞録: だから歩く旅はやめられないの 感想久しぶりに著書の本を読んだが、歩き旅の内容を見ても往年のパワーや独創性がなくなり、安易、中途半端なチャレンジになっていることは歪めない。 年齢を重ねたなりのチャレンジを期待したいが、歩き旅にこだわるならそろそろ日本縦断とか一周をしてみたらと老婆心ながら思う。 読了日:12月27日 著者: 斉藤 政喜メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
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月の大半を徒歩の旅で過ごした9月は、ほとんど読書することがなく終わった。 読書の習慣というものは、リズミカルでなければ続かない。 プラス、無性に読みたい!!という欲。 いったん止まってしまって、その後に本を手に取ることがなくても平気なら、ホンモノの読書家とは言えないだろう。 自分に当てはめてみるとおそらくそうだ。 今月に入っても本を開いていない。 読書よりも夢中になる遊びに熱中している限り、しばらく本との時間はお預けです。 9月の読書メーター読んだ本の数:2 読んだページ数:518 ナイス数:14 クワバカ~クワガタを愛し過ぎちゃった男たち~ (光文社新書)の 感想新刊を買うのは実に2年ぶり。書店で見つけたときは電流が走り、速攻でレジに持っていった。 この本はクワガタに取り憑かれたマニアたちの記録である。南西諸島に棲む希少種マルバネクワガタの採集ではハブの恐怖におののきながらも一晩中暗闇のジャングルをさ迷い、採集した天然のオオクワガタでは、その大きさを1ミリ単位で競う。クワガタを愛し過ぎるあまり人生の全てを捧げ、転げ落ちた人々の壮絶さが伝わってくる。著者は最後に、幸福とは『好き』という業火に、一度でも身を投じたか、投じなかったか、であると書いている。 読了日:09月04日 著者: 中村 計
ヒッチハイク女子、人情列島を行く!の 感想内容に多少の誇張はあっても冒険譚を読むのは楽しい。冒険記こそがノンフィクションの王道だと勝手に思っている。 この本、21才の女の子がルンルンでヒッチハイクの旅と思いきや、+民泊+所持金無…という端からみれば、とてつもなく無謀で甘い旅。人の善意にすがり、毎日の宿と食事にありつく。貞操を奪われそうな危険な目に遭っても、最後には、日本は『いい人』がたくさんいる素敵な国ときた。 単なる旅行記に留まることなく、これは冒険の記録といってもいい。 著者の無鉄砲な勇気とポジティブな行動力に拍手を送りたい。 読了日:09月02日 著者: 池田知晶読書メーターメインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
猛暑だった8月は、どこにも行かずに自宅で過ごす毎日でした。 ここぞとばかりに、片っぱしから積ん読を崩していました。 読んだ本は21冊。 相変わらずの乱読、久しぶりのハイスコアでした。 8月の読書メーター読んだ本の数:21 読んだページ数:5988 ナイス数:78 おまもり―ホロコーストを生きぬいたある家族の物語の 感想ユダヤ人絶滅収容所は数多くあるが、この本の舞台となったのはドイツのベルゲン=ベルゼン。アウシュヴィッツのようなガス室はなかったが、チフスや栄養失調で多くの命が失われたという。また主人公一家が難民として移送されたオランダの収容所についても触れている。 ホロコースト関連の本に共通する生存者の証言はどれも凄惨を極めるが、この本は解放当時10才だった少女の証言をもとに編集されており、児童書として中学生でも理解できる内容となっている。戦争の悲惨さを伝える資料として広く読んで欲しいと思う。 読了日:08月31日 著者: リラ パール,マリオン・ブルーメンタール ラザン 京都の流儀―もてなし篇― (翼の王国books)の 感想リタイアする前、出張のANAの機内で毎月楽しみにしていた機関誌のお気に入りシリーズ。2作目の今回も魅せられてしまった。知らない世界を居ながらにして知ることができるのは読書の最大の魅力であり、楽しみ。それが自分が棲む日常からかけ離れているほど嬉しい。活字を通して花街のしきたりに触れ、舞芸妓さんたちの美しい写真を見るだけでも価値がある。『翼の王国』の連載は続いているので、シリーズ3作目の上梓が待ち遠しい。 読了日:08月30日 著者: 徳力龍之介 読書の価値 (NHK出版新書 547)の 感想第四章【読書の効用】のなかで著者曰く~本には、日常から距離を取る機能がある…まったく同感。それを体感したくて私は多くの時間を読書に当てている。気になるのは電子書籍の動向。著者が言う、紙からとって代わる時代は近いのか。日々、本棚を眺めることで心の平安を得、至福の時間を過ごすフェチな自分にはそんな未来はゴメンである。 読了日:08月30日 著者: 森 博嗣 色街を呑む!―日本列島レトロ紀行 (祥伝社文庫)の 感想レポにある色街の選択が、メジャーな飛田新地を除いてマイナーなのが良い。私もいくつか訪ねたことがあるが、地元の人も行かない路地の奥のそんな場所で、著者が『結界』という言葉で表現しているように、その場に立つと空気が変わることを実感している。 著者の、色街で呑むというこだわりと目的はどこにあるのか最後まで分からなかったが、『結界』を越えた異空間での緊張感と、正体を忘れるくらいまで呑むことで、それを解き放つ酒の力による魂の弛緩を求めていたのかもしれない。全編を通して酒で亡くなった著者ならではの名レポだと思う。 読了日:08月30日 著者: 勝谷 誠彦 無能の人・日の戯れ (新潮文庫)の 感想つげ義春の作品は忘れた頃に思い出しては頁をめくっている。 なかでも『無能の人』の連作は最高傑作だと思う。著者を投影した主人公には、先が見えない虚無で退廃的なやるせなさの中に、流されながらも生きていくしたたかさが見える。この“やるせなさ”を感じとることが私にとって、一連のつげ作品に共通している魅力だと思う。 読了日:08月29日 著者: つげ 義春 停電の夜に (新潮文庫)の 感想これまで自分がもっていた短編小説の概念が変わったと思える作品集。短編には起承転結のストーリーが当たり前で、短いながらもオチが必要だと思っていたが、この作品集に共通するのはそんなことはどうでもよい、心地よい余韻。なかでも『三度目で最後の大陸』が、情景がありありと浮かぶようで、叙情的でグッときた。 読了日:08月29日 著者: ジュンパ ラヒリ 京都の流儀 (翼の王国books)の 感想ANAの機関誌『翼の王国』に連載されているコラムですが、出張に行く機内でいつも楽しみに読んでました。単行本化にあたり加筆・修正されているので、文章もいくぶん短くなっているようです。 さてこの本、これまでもこれからも、私には一生縁がないであろう花街のお茶屋のしきたりや舞妓遊びなど、京都の雅な一面を知ることができて貴重です。写真も雰囲気が良くてセンスを感じます。 読了日:08月25日 著者: 徳力龍之介 限界集落ーMarginal Villageの 感想写真の中のご老人たちの表情が印象的。特に目が良い。深いシワにも人それぞれの生きざまが表れているようだ。寂寥感が漂う写真を見ていると限界集落の存在は国の貧しさの象徴でもあり、ただ朽ちるがままに放置する行政側に憤りを感じずにはいられない。 読了日:08月23日 著者: 梶井照陰 津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)の 感想あまたある犯罪本のなかでも名著ではないだろうか。歴史の闇に埋もれていた事件を戦時下での当時の風俗、社会背景を織り混ぜ、多角的に検証し、掘り起こした著者の努力に敬意を表したい。されど、“死人に口なし”、犯人の苦悩と狂気の内面までは永遠に捉えられない。蛇足だが、この事件は過去何作もの『八つ墓村』の映画・TVドラマでの重要なテーマになっているが、吉岡秀隆主演で2019年にドラマ化された再現シーンが一番リアルだったと思う。 読了日:08月23日 著者: 筑波 昭 川上弘美書評集 大好きな本 (文春文庫)の 感想書評の要諦は読書欲を刺激する一点にあり、読者がすぐ書店に行って買いたいと思うように誘導する…と、ある作家の著作解説に嵐山光三郎が書いたが、著者の文章は前置きが長くて、回りくどくて、癖がある。購買意欲をそそる万人受けの分かりやすい表現ではなく、面白味も少ない。短文であるのに最後まで読む気がしない。新刊の新聞書評や解説だからこそ、これでいいのかな?と思ってしまった。 読了日:08月21日 著者: 川上 弘美 野蛮な読書の 感想初めて著者の作品を読んだ。あらためて文章の旨さに舌を巻く。 奇しくも私と同じ年齢。エッセイにラインナップされた本には私の世代でも時代が古い獅子文六、宇能鴻一郎、池部良といった往年の渋い作家や写真家の作品もありその幅の広さに驚く。 私も大好きな山田太一『異人たちとの夏』や棟方志功『板極道』が紹介されており、思わずニヤリとしました。 読了日:08月18日 著者: 平松 洋子 日本列島縦断歩き旅-宗谷から佐多へ-の 感想還暦を迎えた著者が85日間で日本列島を北海道から鹿児島まで徒歩で縦断した記録。同様な徒歩旅の本は多くあるが、何よりも日記形式で昼食のリンゴ一個の値段まで詳細に記録した内容が後に続くチャレンジャーたちへの貴重な資料となること請け合いである。著者あとがきで、旅の中で宿や食事、洗濯、トイレといった衣食住の心配から解放されることがなく雑念に支配されたと語っている反面、日本の風景の美しさや接した人々の寛容さにも触れている。そんな意味では3000キロの旅は人生の記憶に残る大きなチャレンジであったに違いない。 読了日:08月17日 著者: 方波見 光彦 ヤマケイ文庫 山怪 山人が語る不思議な話の 感想マタギや山里に住む人々が語る、山で体験した不思議な話が多く収められているのが新鮮。現代版の『遠野物語』のようです。 30年以上登山をしてきた私ですが、一度もこうした経験はないです。鈍感なんでしょうね。 読了日:08月17日 著者: 田中 康弘 実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)の 感想多読はともかく、併読は3冊が限度かな。 著者のように最後まで読みきるのは10~15%という贅沢な読み方はできず、面白くなくてもつい最後まで読んでしまう、貧乏性です(笑)。 お金があれば新刊を追っかけたいが、この本も10年前に出された鮮度が落ちた本。 読了日:08月14日 著者: 成毛 眞 なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか 最強11神社―八幡・天神・稲荷・伊勢・出雲・春日・熊野・祗園・諏訪・白山・住吉の信仰系統 (幻冬舎新書)の 感想普段何気なく訪れ、何のこだわりもなく参拝している神社。 この本は神社の分類、御神体、歴史、分布、祭礼と、神社のことを分かりやすく体系的に多くの疑問に応えてくれた入門書という位置付けかな。タイトルの八幡神社の内容には特化していないのがちょっと残念ですが、神社の全体像を知る上には勉強になります。 読了日:08月13日 著者: 島田 裕巳 マンボウ思い出の昆虫記 虫と山と信州との 感想私が読書に目覚めたのは中学生の時に『どくとるマンボウ昆虫記』を読んでから。それから早50年。著者没後に出されたこの本はファン必読の書だと思います。昆虫と山への愛着ばかりでなく、旧制松高時代に寄稿された小編には、美しく流れる文章に並々ならぬ才能を見ることができます。後年発表された『谿間にて』のモチーフになったエッセイや、巻末に収録されている『思出之昆虫記』は虫への愛が溢れており、著者の新たな側面を見ることができました。 読了日:08月09日 著者: 北 杜夫 てっぺん 我が妻・田部井淳子の生き方の 感想唯川恵『淳子のてっぺん』つながりで読む。一時代をリードした稀有なアルパインクライマーである夫婦とも、登山家ではなく“登山愛好家”“山屋”と称しているところが謙虚で好感が持てる。田部井淳子さんが生涯を山屋であり続けた裏には著者の献身的な支えがあったことに、たぐいまれな夫婦愛を見た思いでした。 運もありますが、私の知ってる限りでも登山史に残る実績を残した山屋で還暦を過ぎて死ぬ間際まで山を登り続けた人はそんなにはいないです。困難なルートに挑み続けた登山家たちのほとんどが山に逝っていますね。 読了日:08月08日 著者: 田部井 政伸 お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記) (創元ライブラリ)の 感想読書日記シリーズ三作目。今回もマーカー片手に読みたい本をチェック。どんどん積ん読が増えていく。 今更ですが、著者の小説は一冊も読んでいないので、そろそろと思い、『私の男』と『赤朽葉家の伝説』を購入。 …といっても、チェックして買った本が順番待ちしているので、ページをめくるのはまだまだ先になりそうです。 読了日:08月07日 著者: 桜庭 一樹 淳子のてっぺん (幻冬舎文庫)の 感想この小説の主人公・田部井淳子さんの足跡についてはいくつかの著作を読んできたので大方知っていたが、小説として読むと、また違った側面を知ることになって新鮮だった。クライミングで使うシットハーネスは、その昔ゼルブストといっていたが、文中で出てきたので思わずニンマリしました。 読了日:08月06日 著者: 唯川 恵 書店はタイムマシーン (桜庭一樹読書日記) (創元ライブラリ)の 感想読書日記の第二弾。今回も読みたい本をマーカーでチェックしながら読了。 山口瞳『血族』、フィリップ・グランベール『ある秘密』などをチェック。 それにしても著者の読書愛に驚く。ご飯を食べるように本を読んでいる。そして、取り巻く編集者たちの本好きにも脱帽。日記には直木賞受賞のいきさつもあって今回も楽しく読めた。 読了日:08月04日 著者: 桜庭 一樹 売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポの 感想渡鹿野島のことを知ったのは40年近く前だろうか。当時、若く血気盛んな友人たちから、武勇伝のごとくこの島で遊んだ話を幾度なく聞かされたことを覚えている。非合法の売春によってこれといった産業もなかった島は潤い、多くの住民はその恩恵を受けたわけだが、離島に限らず、地方都市や過疎の村にしかり、現代の日本は高齢化と産業の衰退によって凋落の一途をたどっている。単なる風俗レポートではなく、この作品はそんな日本の光と影を冷徹な目で表現してくれたと思う。 ちなみに、上原善広著『辺境の路地へ』にもこの島のレポが書かれている。 読了日:08月03日 著者: 高木 瑞穂読書メーター メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
このところの猛暑と一段と加速を増しているコロナ禍のなかで、ちょっとした外出をすることさえ躊躇しています。 空虚で閉塞的な状況が長く続けば、知らぬ間に心身のバランスを崩すことになる…分かっていても、無職で、日がな一日を過ごす我が身にはなんと一日が長いことか(笑)。 今更ですが、私にとってのストレス解消法の一つが読書。本を読むことでむなしく過ぎていく時間を埋め、一日をそつなく過ごすリズムを得ているのかもしれません。 さて、日本縦断の歩き旅を中断してから自宅にこもり続け、“積読本”を崩しながら活字を追う毎日のなかで、印象に残った本を紹介したいと思います。 縁あって、著者からいただいた『日本列島縦断歩き旅-宗谷から佐多へ-』(2011年3月刊 エルアイユー)です。 還暦を迎えた著者が3シーズン(平成20~22年)85日間をかけて、日本列島を北海道宗谷岬から鹿児島県佐多岬まで徒歩で縦断した記録です。 同様な徒歩旅の本は多くありますが、日記形式によるリアルな描写が読む側の気持ちを惹きつけ、一緒に旅をしているような、緊張感と心地よさを感じます。 宿の情報はもちろん、昼食のリンゴ一個の値段まで詳細に記録した内容がインパクトを広げています。 後に続くチャレンジャーたちへの貴重な資料になるのではないでしょうか。 著者あとがきで、旅の中で宿や食事、洗濯、トイレといった衣食住や天気の心配から解放されることがなく雑念に支配されたと語っていますが、これは中途半端に縦断の旅をかじっている私にも思いっきり共感できますね。 歩いているときに何を考えているのか…と振り返ってみれば、今夜はどこに泊まろうか、そろそろ宿を確保しなきゃあ、自販機なくなったらどうしよう、もよおしたらトイレあるかな…私の場合はそんなことばかり考えて歩いていました。 更に、雨にやられたり、暑さにやられたり、そのたびに悪態をつきながら歩くという、傍から見ても旅を楽しんでいるという風情ではありません。 しかし、旅に順応し、心底旅を楽しむ姿勢に変えることによって、歩くことの意味はより深さを増すようです。 著者は移動速度と身の丈からのみ感じ取れる自然の美しさを体感し、過疎化が進む現状を目の当たりにし、この国の行く末を案じています。 また、道中で接した多くの人々の寛容さにも触れており、積極的に人と関わっていく姿勢が見て取れます。 そんな意味では、3000キロの旅は人生の記憶に残るだけではなく、何かを気づき、変わることができた大きなチャレンジであったと思います。 最後に、 私にとってこの本、これからの歩き旅の指針になるような気がします。 歩くことの意味を自問自答しながら、残りの旅を楽しみたいと思います。  メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
7月の読書メーター読んだ本の数:8 読んだページ数:2204 ナイス数:24 少年になり、本を買うのだ 桜庭一樹読書日記 (創元ライブラリ)の 感想読みたい本をマーキングしながら読了。海外ミステリと現代小説が多いが、古典も紹介されおりブックガイドとしても面白かった。もちろん、日記も楽しめた。 読了日:07月31日 著者: 桜庭 一樹 昆虫標本商万国数奇譚の 感想昆虫標本商を生業とする方が書いた本を初めて読んだが、内容的にはビジネスの話でもないし、虫好きなら一番興味がある採集の話に特化しているわけでもなく、立ち位置は中途半端。 家族、離婚等プライベートな話題、標本商として一人立ちするまでの著者のこれまでプロフィールがごちゃ混ぜになって冗長で読み難くかった。インドで拘束された話がちらりと出てきたが、後発の『虫に追われて』に詳しく書かれているようだ。 読了日:07月30日 著者: 川村 俊一 だいたい四国八十八ヶ所 (集英社文庫)の 感想いつかチャレンジしたい歩き遍路。この本はそれを目指す人のガイドブックになると思う。 歩き旅ならではのマメとの闘いと対処方法については、長距離を歩いた人ならではのエッセンスがある。 著者曰く、信仰心もなく、四国を歩いているという存在感を得たいがために歩くというチャレンジは、大いに共感できた。 読了日:07月27日 著者: 宮田 珠己 俺たちの定年後 - 成毛流60歳からの生き方指南 - (ワニブックスPLUS新書)の 感想定年後をどう生きるのかという、指南書を数多く読んできたが、この本が今の自分に一番マッチした。 本読みの成毛氏だけあって、蔵書はその人の過去を、積ん読は未来をという、表現にも共感しました。 読了日:07月25日 著者: 成毛 眞 誰も「戦後」を覚えていない [昭和30年代篇] (文春新書)の 感想私が生まれた昭和30年代のことを知りたくて手に取ったが、内容的に薄かったのが残念。 著者がテレビの仕事をしていたということもあり、ボリュームも芸能、マスコミのテーマが多く、この方面に興味がある読者なら満足できるのでは。 昭和30年代は日本人が得たもの、失ったものも多く、もっと多方面に渡った検証があればよかったと思う。 読了日:07月17日 著者: 鴨下 信一 下山の思想 (幻冬舎新書)読了日:07月16日 著者: 五木 寛之 エンデュアランス号漂流 (新潮文庫)の 感想漂流記モノでは古典の部類になるが、サバイバルの視点と主人公シャクルトンのリーダーシップの視点という二つの観点から単なる漂流記モノではくくれない読み応えがある。 全編を通して流れる“諦めない精神力”は現代に生きる私たちにも通じるものがあると思う。 椎名誠氏が推薦していてずっと気になっていたが、ようやく読み終えることができた。 また、文庫版あとがきでこの作品が翻訳された経緯に、故・星野道夫氏の存在があったことに改めて驚きました。 読了日:07月15日 著者: アルフレッド ランシング 本の読み方の 感想稀代の本読みの著者は、「多読家であるが、読書家ではない」と語っている。本を読む姿勢にまでこだわるくだりは本を愛してやまない著者ならではであろう。本の下敷きで最期を遂げた著者の珠玉のエッセイです。 読了日:07月14日 著者: 草森 紳一読書メーターメインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
軽量化を図るために紙一枚の重さまで気にして歩いた今回の日本縦断の旅ですが、そんな気持ちとは裏腹にザックに忍ばせていたのがアルフレッド・ランシング著『エンデュアランス号漂流』。 1914年に南極大陸横断を目指して遭難し、17ヵ月後に28名の乗組員全員が奇跡的な生還を果たすというノンフィクションです。 旅の途中で気ままにページを開いてきましたが、468頁の大作なので読み切ることができず、ようやく今日、読了しました。 さて、本書は数多くある漂流記モノでは古典の部類になりますが、サバイバルの視点と主人公シャクルトンのリーダーシップの視点という二つの観点から、単なる漂流記モノではくくれない読み応えがある内容でした。 全編を通して主張する“諦めない精神力”は現代に生きる私たちにも通じるものがあると思いますし、リーダーを信頼したメンバーが一丸となって 数々の苦難を乗り越えていくプロセスは、人間関係が希薄になっている今の社会において清々しさを感じました。 椎名誠氏が『活字の海に寝転んで』(岩波新書)の中で推薦していてずっと気になっていましたが、もっと早く読んでおけば、歩き旅という私の小さなチャレンジにも少しは影響を与えていたかもしれません。 “諦めない”ことは、夢を実現するために必要な最低限の要素だと思います。 また、文庫版あとがきでこの作品が翻訳された経緯に、故・星野道夫氏の存在があったことに改めて驚きました。  メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
最近は小説を読まなくなりました。 食わず嫌いもあるけど、ワクワク感というか、心の躍動を感じさせる作品に出会うことが減ったからと勝手に解釈してますが、裏返せば、私の場合は年齢的な部分からくる精神の衰えが大きそうです。 年を取ると、ちっとやそっとで感動しないし、騙されないし(?)、そもそも驚かない。 それが小説のようなフィクションの世界になるとなおさらです。 もう、少年の心に、虫を追っかけていた純真無垢のあの頃には戻れませんね。 もっとも、これは自分に限ったことですが…。 それがあってか、このところの読書傾向はもっぱらノンフィクションに傾いてますが、これはおそらく、この年になってもまだ知らない世界を覗いてみたいという、か細いがちょっとした知識欲からきていると思っています。 さて、そんな中で“読んでしまった小説”を紹介します。 パトリシア・コーンウェルの『検視官』シリーズ第24作『烙印』(2018年刊 上・下巻)。 第1作は1990年上梓なので、かれこれ30年近くこのシリーズとつきあってきました。 小説は読まないと言いながら矛盾していますが、こうなると完結まで意地でも読み続けてやろうと思います。 さて本作では、年を重ねた登場人物たちそれぞれがキャリアと円熟味を増した中で、ピート・マリーノの相変わらず下品でブレない存在感が健在です。 16作目から訳者が相原真理子さんから池田真紀子さんに代わりましたが、マリーノのキャラを変えることなく継承してくれたのがうれしい。 いつものことながらストーリーは冗長でマンネリ感は歪めないが、読者サービスだろうか、本作はマリーノやケイ・スカーペッタの体形や容貌を少しだけ小出しにしてくれたし、スカーペッタの若かりし頃の不倫体験などもありました(ちょっとネタバレかな)。 一番気になるスカーペッタやベントンの年齢は教えてくれませんが、マリーノを含めて50代前半かな?と想像している。 さて本作もいつも通り、最後の30ページがクライマックス。 そろそろこのパターンは飽きてきたが、小説は読まないとうそぶきながらも、それを承知で次作もきっと読むんでしょうね(笑)。  メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
いつか自分も…と、ずっと憧れ続けていた日本列島を徒歩で縦断する夢。 病気になる前は、このチャレンジは手の届くところにあったはず。 しかし、人生は思うようにはいかない。 不意に襲ってきた病気によって、その距離が遠のいてしまった感は歪めない。 膵神経内分泌腫瘍による膵臓の半分切除と胆のう、脾臓の摘出、リンパ節郭清。 5年前には左副腎の摘出も経験した。 いってみれば、“空っぽオヤジ”だ。 頭じゃなくて、お腹のことだけど(笑)。 再発や転移の不安だってよぎる。 こんな体になって健康といえるのか、日本列島徒歩縦断などというとんでもないチャレンジができるのか?? 今更だが、つくづく健康の大切さを思う。 でも、この二冊の本に出会ったおかげで、目の前がぱっと明るくなったんですね。 …ポジティブに考えようと。 笑福亭小松著『日本列島徒歩縦断 がん克服落語会』は、進行性の胃がんにより、胃、脾臓の全摘、膵臓の半分を切除した著者が130日間をかけて鹿児島→札幌間3000キロを徒歩縦断するレポート。 行く先々で落語会を催しながら自らの体験を語り、がん患者と交流していくという内容です。 点滴をしながら縦断をやり遂げる精神力には脱帽しかありません。 死に直面した時に『やった!!』いえる人生を選ぶための努力は、本人でなくとも感動します。 そしてもう一冊が、杉本允著『じんじくのニッポンてくてく縦断記』。 69歳で与那国島から北海道納沙布岬までの3900キロ(141日間)を踏破するレポートですが、著者は23歳のときに結核で片肺と肋骨7本を失くしています。 旅の間も体調を崩し、宿で静養し、4カ月も咳が止まらずといった読む側がハラハラする場面がいたるところに出てきますが、そこまでして目的に向かっていく意志がどこにあるのか…これが知りたくて最後まで読みました。 二人に共通しているのは、自分に負けずに(病気に負けずに)“やり遂げる”という、強いこだわりだったのではないかと思います。 そのこだわりこそが、憧れていた日本列島を徒歩で縦断するというチャレンジに結晶したのではないでしょうか。 私にとって今年の入院手術は大きなダメージになりましたが、私よりも厳しい境遇を背負った先達のチャレンジを読むにつれ、勇気をもらうことができました。 夢を、まだまだあきらめません。  メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
今日発売の日本の島ガイド『SHIMADAS』2019年度版(日本離島センター 税込4400円)を購入しました。 初版は10月1日に出ていますが、本日発売分は第2版となります。 さすがに1712頁の厚さは半端ではありません。 その重量感と存在感はかつての電話帳のよう。 この本には有人島、無人島合わせて1750の島が紹介されていますが、島に行くことができなくても、眺めているだけでワクワクしてきます。“島フェチ”にとってはバイブルのような本です。 当分の間、デスクの上に鎮座させ、これからじっくりとページをめくっていきたいと思います。 さて、この本で礼文島に次いで4番目に紹介されているのが、北海道の利尻島。 面積182.12K㎡、周囲64Km、人口5090人、2418世帯の島です。この島の魅力はなんといっても利尻山(1718㍍)にあるといっても過言ではありません。 …といっても、こう断言できるのは山に興味がある人だけでしょうか(汗)。 私にとって利尻島は、青春の島といってもいいくらいの思い出があります。 1978年の19才の夏、北海道を一人旅し稚内からフェリーで利尻島に渡ったのが8月26日。 翌朝5時に鴛泊港から登山を開始し、利尻山頂上9時着。 そのまま踵を返して11時に鴛泊港着というスピード登山でした。 当時の山行記録を読んでさらに驚いたのが、その足で、港からレンタサイクルで島の一周(56キロ)をしたということ。 これを3時間ほどでやっている。 一日に登山とサイクリングを組み合わせたチャレンジは、体力があり余っていたとしか思えません。 還暦を過ぎた今では考えられないチャレンジに、若かったんだなあ…と感心しきりです。 古いアルバムにあった、利尻山頂上(1978年8月27日登頂)で撮った写真。 良い顔しています(ニッカーズボンが懐かしい・笑)。     メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
電車通勤の良いところは、本が読めることでしょうか。 復職して往復3時間の通勤がスタートしましたが、つまらない仕事に比べると読書をしているときがいちばんの至福のひとときです。 最近ブックオフのオンライン通販で手に入れたのがクレイグ・マクラクラン著『ガイジン巡礼珍道中』(2003年小学館文庫)。 西国三十三か所の寺院を徒歩とママチャリで23日間で成し遂げる旅のレポートです。 著者の本は四冊出ていますが、最初に出版された99日間で達成した『ニッポン縦断歩き旅』(1998年同)から、二作目の78日間で達成した『ニッポン百名山よじ登り』(1999年同)、そして三作目の30日間の記録『四国八十八か所夏遍路』(2000年同)までは出版と同時に購入して読んできました。 しかし、最後の四作目『ガイジン巡礼珍道中』が手に入らず、ようやくこの数日間で読むことができました。 いずれのチャレンジも徒歩や自転車といった人力によるもので、しかもそのスピードも凄いですが、野宿を中心とした旅の記録だということに価値を感じます。 おそらく、日本人でもこれに並ぶチャレンジをした人は少ない(いない?)のではないかと思います。 チャレンジの理由については、著者がシリーズの中で「日本をもっと知りたいから」「本当の日本を探して」と幾度も書いていますが、日本人の奥さんを持ち、母国のニュージーランドと行ったり来たりの生活の中で親日家として過ごしてきても、日本の魅力をもっともっと追求したいという欲求にはまったく頭が下がります。 田舎の暮らしや銭湯のルールなど、日本人では当たり前のこともガイジンならではの疑問や驚きの表現が随所にちりばめられていて楽しいです。 かたや、国道沿いや山に捨てられたゴミやたばこの吸い殻に憤慨したり、ケータイに毒された国民性にあきれたり、海外に行ったのに外国人とひと言も話さずに帰ってくる団体ツアー…といった辛辣な批判に感心することしきりです。 最後の四作目が出てから16年が経ち、冒険紀行としてもそろそろ古典の部類になってきましたが、目標に向かって人力でやり遂げるという根底にあるこだわりの精神は、時代が変わっても決して風化しないと思います。 いつの日にか、私にもこんな旅ができたらと…うーん、夢ですが。  メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
3畳から6畳の部屋へ書斎の引越し作業を開始して半月。 消費税が上がる前の駆け込み注文で、ブラインドの取り付け、読書用の一人椅子とスタンドランプを購入し、ようやく書斎の体裁が整いました。 更に、既製の本棚に加え、DIYで自作した壁一面本棚と文庫専用本棚に1500冊の蔵書が収まりました。 何しろ、自宅療養をいいことに暇を持て余している身。 時間はたっぷりあります。 これを機会に本棚に並べるルールを見直して、カテゴリー毎に棚(セル)を埋めることにしました。 参考にした本が成毛眞著『本棚にもルールがある』。 著者曰く、「社会人として、①サイエンス②経済③歴史のセルがない本棚は作ってはならない」ということですが、そろそろリタイヤして隠遁生活に入る私にとってはそんなことどうでもよくて、自分の好きな分野をひたすら読むことにこだわっています。 もちろん、偏ったってかまやしない(笑)。 現在の蔵書の内訳をみると、ノンフィクションと文学(小説)の比率は7対3くらいですが、最近は新刊の小説をほとんど買うこともなく、読み続けているシリーズを一年遅れでもっぱらBOOK OFFで購入しています。 小説離れが進んで、好きなカテゴリーを中心としたノンフィクションに読書傾向が移行しているようです。 本の並べ方には強いこだわりもなく、どちらかというと見栄え重視で、規格別(大型本、単行本、新書、文庫)→出版社別→著者別に並べていました。 今回は以下のように文庫本(小説)を専用本棚に一括りにし、ノンフィクションは大まかなカテゴリー毎に棚(セル)を括って並べ替えをしました。 ※冊数の多いカテゴリー順 ①小説…古典小説→時代小説→海外ミステリ→現代小説→エッセイ ②山行記、山の随筆、山のガイド、山岳会会報 ③旅行記、紀行、冒険記 ④歴史…日本古代史、幕末、ナチスドイツ(ユダヤ、ホロコースト) ⑤コミック ⑥地図 ⑦自然科学…古生物、地学、昆虫、離島 ⑧社会科学…貧困、老齢化、社会保障、事件、環境、原発、風俗、葬送 ⑨経済…ビジネス、ハウツー、韓国中国外交 ⑩書誌学…書評、本棚、ブックガイド ⑪雑誌 ⑫その他…昭和レトロ、日本酒、鉄道、料理、町並み、渓流釣り、民俗学、遊郭跡、カメラ等 著者別にまとめることをできるだけ踏襲しましたが、カテゴリーでくくると、棚の中に単行本や新書、文庫が混在します。 それでも見やすさ、探しやすさを考えた場合、悪くありませんね。 さて、蔵書は本棚にうまく収まりましたが、棚のスペースはすべて埋めることなく、2~3割ほど開けています。 もちろん、今後の本の購入を考えてのことですが、増えた分だけ処分することは常に念頭におく必要があります。 一般的な木造家屋では1平方メートルで180kgが荷重限度のようです。 優良住宅ではその倍の360kgなので、昨年新築した我が家は後者でいけそうです。 しかし、我が家は本を置くための構造強化をしていませんし、まして書斎は2階。 いまのところ床鳴りや傾き、建具の立て付けは大丈夫です。 どちらにせよ本が増えすぎて、床が抜けては本末転倒ですね。 これ以上本を増やさないように努力しようと思います。 …そこで参考になったのが、西牟田靖著『本で床は抜けるのか』 故・井上ひさし氏のお家が、あまりの本の重さで床が抜けてしまったというくだりは笑ってしまいました。  ※メインの壁一面本棚(1800×2500)と文庫専用棚(2350×810)  ※人力(徒歩・自転車・リヤカー)による縦断記、横断記。大好きなカテゴリーの一つです  ※本棚整理の参考書 メインサイト『 琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪  
『A Killing Frost』…日本版では『フロスト始末』(上下巻 創元推理文庫)を読みました。 フロスト警部シリーズの6作目であり、R..Dウィングフィールドの遺作である。 今更ですが、イギリスの警察小説の金字塔であり、自分にとっても最高峰と言っていいぐらいの海外ミステリです。 前作『冬のフロスト』が2014年に上梓されたとき、遺作の『A Killing Frost』の翻訳は2020年以降になるという下馬評でしたが、うれしいことに3年後の2017年、待ちに待った翻訳です。 嬉しかったですね。 一行一行を舐めるように、慈しむようにページをめくりました。 遺作となった今作はシリーズの中でも最高傑作だと思いますね。 このシリーズをもう読むことができないと思うと、思いっきり寂しくもありますが、私の心の中にはフロスト警部がずっと生き続けていく気がします。 猥雑で下品、それでいて優しくて、どこか哀愁が漂うおっさん。 そしてめちゃくちゃ忙しく、眠ることさえ許されない仕事師。 こんな魅力的なキャラは二度と現れないと思います。 さらば、フロスト警部!!   ★メインサイト「 琺瑯看板探検隊が行く」もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪ 

久し振りの読書評です。 『風の中のマリア』『ボックス』』『錨を上げよ』『永遠の0』『海賊と呼ばれた男』等、百田尚樹の作品には肉厚で読み応えのある作品もありますが、『フォルトゥナの瞳』、これはどうでしょうか。 一言でいえばちゃちゃっと書いて、ちゃちゃっと出版かな。 人気作家になりすぎて、作品の中身が薄くなってますね。 こんなのを読むと、安売り量産の作家だと思えてしまう。 死後の世界とのコンタクトをモチーフにした作品には、天童荒太『悼む人』や浅田次郎『椿山課長の7日間』がすぐ思い浮かびますが、『フォルトゥナの瞳』は先のストリーはおろか結末まで読めてしまうので、小説の世界にどっぷり浸かれないですね。 ラストページでは、思った通りの展開になってさらにがっかりしました。 映画化するには面白いかもしれませんが、それもB級作品。 小説としてはもっと読ませてほしかったと思いますね。 好きな作家なので、あえて辛口評です。 *2017.1.20読了  ★メインサイト「 琺瑯看板探検隊が行く」もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪ 

13万部突破の新書。 副題に『内向的人間の幸福論』とある。 実はこれ、新聞の書評をみて、読みたくなった本。 蛭子さんはテレビの露出も多く、印象としては限りなく"変なおじさん"である。 事実、地そのままをいく、我がままな変なおじさんなんだけど、反面、それを補って余るほど"良い人"。 できるだけ目立たずに、出しゃばらない。 自己主張なんてとんでもない。 友達は作らない。 ひとりぼっちは楽しい… こうした蛭子さんのポリシーは、実は、自分にとって思いっきり共感ができる。 同じ匂いを感じるのだ。 今の仕事をする上で、人とのコミュニケーションや、状況によっては積極的な関わりが不可欠であるが、できれば、そんなもの全部捨て去って、一人になり、楽になりたいと絶えず思っている自分がいる。 群れなくてはやっていけない職場社会で、群れたくない自分は、絶えず心の葛藤を感じている。 休日はいつも一人で、好きなことをするのが自分流だし、一人でいることのほうが性に合っていることも蛭子さんと同じである。 …かといって、孤独が好きなわけではない。 矛盾しているかもしれないが、私のことを肉親以上に理解しているカミさんといることが自分にとって一番落ち着くのも事実で、 できれば単身赴任から一刻も早く解放されたいと思っているくらいだ。 人づき合い、って本当に必要なんだろうか。 社会のルール、習慣に惑わされて、人や地域社会と接点を持っていくことが流れ作業になっていないだろうか。 人づきあいをしなくても、生きていくことはできないだろうか。 ひとりぼっちを笑ってほしくない… 人間は一人で生まれて、一人で死んでいく。 死ぬために生まれてきたということを忘れてはいけない。 "変なおじさん"の蛭子さんの本、"変な自分"には思いっきり、どストライクでした。  ★メインサイト「 琺瑯看板探検隊が行く」もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪ 

今さらですが、2010年にNHK連続ドラマになった『ゲゲゲの女房』の原作を読みました。 昨年の暮れに水木しげるが亡くなったこともあって、手に取ってみました。 僕にとって水木しげるは、手塚治虫、石ノ森章太郎、藤子不二雄と並ぶ漫画界の巨匠。 子供の頃からのファンで、むさぼるように読んでいました。 もちろん、『ゲゲゲ』ではなく、『墓場の鬼太郎』時代からなので、相当に長いつきあいです。 中学時代はちょっとませたガキだったんで、月間漫画雑誌『ガロ』を読み、水木しげる、つげ義春の作品がご贔屓でした。 さて、この本の著者は水木しげるの奥様である武良布枝さん。 水木との結婚から晩年までを、さらりとたんたんとした筆致で綴っています。 貧乏時代の話も壮絶ですが、明るく笑顔を忘れずに乗り越えていくその姿が、日本女性の芯の強さと相まって感心します。 夫を立てる謙虚さと、たくさんのやさしさが文章に溢れていますね。 一気読みでしたが、読後感も爽やかでした。 この本を読んでから、ドラマも観たくなってしまい、YouTubeにアップされている動画を探してみたら総集編がありました。 何と、3時間ぶっ通しで観ました(笑)。 松下奈緒の演技がイメージ通りで良かったですね。 『マッサン』以来、連ドラマニアになって、このところは『あさが来た』の録画を毎日楽しみにしているくらいですが、『ゲゲゲの女房』を見逃したのは今さらながらに後悔しています。 総集編を観た限りでは、原作に忠実だったのも好感が持てました。  ★メインサイト「 琺瑯看板探検隊が行く」もどうぞご覧ください★ ↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪ 

村上龍の『55歳からのハローライフ』(幻冬舎文庫)を読んだのは3か月前だけど、今年になってNHKでドラマ化されることになり、6月14日から始まった毎週土曜日の放映をワクワクしながら観ていた。 原作は以下の5話で構成されている。 1.結婚相談所 2.空を飛ぶ夢をもう一度 3.キャンピングカー 4.ペットロス 5.トラベルヘルパー ドラマは順番は違えど、演技派の役者揃いで楽しめた内容。 何より、原作に忠実に描かれていたのが評価できる。 中でも、昨日7月12日放映の「空を飛ぶ夢をもう一度」は、東京山谷のホームレスというディープなロケなので、映像化は難しいだろうな…と思っていましたが、イッセー尾形や火野正平の熱演で、小説を超えるようなインパクトがありました。 小説のあとがきで、村上龍は、 "主人公たちは、人生の折り返し点を過ぎて、何とか再出発を果たそうとする中高年である。体力も弱って来て、経済的にも万全ではなく、そして折に触れて老いを意識せざるを得ない。そういった人々は、この生きづらい時代をどうやってサバイバルすればいいのか?" その問いが作品の核だった。 …と書いている。 この作品に思いを込めた作者・村上龍の意図は、55歳という老後を意識するとば口に立った人々が、様々な環境の中でこれからの自分の生き方を見つめ直すことへの応援歌にあるようだ。 主人公のスタイルも、お金に困って老後が不安な人や、60歳を過ぎても一人身のその日暮らし、熟年離婚した主婦、早期退職して自分の夢を追うも妻との考え方の乖離に悩む人等、様々なパターンを取り上げている。 かく言う僕も55歳。 思い描くこれからの人生は漠としたものしかなく、カミさんと老後の設計を話し合っているわけでもない。 残り数年に迫った定年と、それからのハローライフを考えてみたくなった。
待ちに待った作品、R.Dウィングフィールド著『冬のフロスト』(上下巻 創元推理文庫)を読了。 前作『フロスト気質』の邦訳上梓が2008年なので、実に5年間も待たされたわけだ。 自分にとってイギリスの正統派ミステリはなじみが薄いが、この作品は別格で世界を代表する警察小説の金字塔だと勝手に思っている。 主人公のフロスト警部は風采が上がらない、行き当たりばったりのいい加減なオヤジ。 更にセクハラたっぷりの下品なトークの連発となれば、ユーモアを通り越して引いてしまう場面も多い。 しかし、知らないうちにこの人物の魅力にぐいぐい引き込まれてしまうのが不思議だ。 気づいたときには上下巻1000頁を一気に読まされてしまうのだ。 本国イギリスでは1984年の『クリスマスのフロスト』からシリーズが始まり、現在2008年に発表された『A Killing Frost』までが出ている。 シリーズは『A Killing Frost』で完結となる。その理由は著者のウィングフィールドが2007年に亡くなっているからだ。邦訳は2020年以降となるという情報もあり、いつの日か原書版のペーパーバックに挑戦してみようかとひそかに思っている。 ともあれ、パワフルで、下品で、やさしくて、人情味があって…そして哀愁が漂うフロスト警部。 猛烈に忙しい主人公の魅力に、どっぷりとはまらせてもらった。
日本全国には限界集落が1万カ所以上あるという。 限界集落とは、過疎化などで人口の過半数を65才以上の高齢者が占める地域であり、公共機能が低下している地域をいう。 無医村、公共交通機関、教育機関の廃止、郵便局や生活必需品を買う施設もない。 いわゆる「ないないづくし」の状態になっている地域が限界集落である。 黒野伸一著『限界集落株式会社』は、そんな限界集落を舞台にし、農業で村おこしを目指す物語だ。 都心のIT企業を辞めて、祖父の家がある限界集落に戻った主人公が村人を動かし、 村の存続を目標に、農業を軸に復興と活性化を行っていくストーリーはなかなか痛快である。 小説の世界とはいえ、地方を取り巻く今の行政のあり方にも一石を投じる内容であり、なかなか読ませてくれた。☆☆☆☆★
中上健次は気になる作家の一人だが、なぜかこれまでその作品に触れたことがなかった。 苦手な純文学、芥川賞作家、難解な表現、更に作家から匂う暴力的な風貌が自分の中で危険信号となって増幅し、 触れてはいけないイメージと重なって、ずっと敬遠していたのかもしれない。 中上の生涯を描いた高山文彦『エレクトラ』は、このところの出張の友として鞄に入れていた。 作者は被差別部落で生まれ育った中上の少年時代から、作家として認められていく過程をあますことなく綴っていく。 46歳で逝く晩年では、中上が故郷・新宮の路地にこだわる心境を見事に分解、分析してみせる。 この手法は出世作となった『火花~北条民雄の生涯』で確立した、執拗なまでの取材が基盤となっている。 これまで中上作品を読んだことがない僕にも、すぐに手に取ってみたくなる魅力的な表現があふれているのだ。 あまたのノンフィクション作家がいるが、高山文彦は自分の中では格別の存在として位置づけたくなった。 *********************************************************************************** 【後日談】 中上健次の作品が読みたくなって市内の大型書店やブックオフに足を運んだが、一冊も置いていない!! 三部作『岬』『枯木灘』『火宅』ぐらいはあるだろうとタカをくくっていたけど…中上健次は過去の作家になってしまったようだ。 仕方ないので、今度は近所の図書館に行ってみたが、ここにもない。 こうなると意地でも探してやる…とばかりに、ネットオークションを漁っています。
20年も続いている人気シリーズ。仏像ブーム?はここから始まったといってもいい。オタクっぽいい作家のとうせいこうと、子供がそのまま大人になったようなイラストレーターのみうらじゅんの絶妙なコンビネーションがこのシリーズのウリである。 地味で抹香臭い仏像の世界を、ポップな感覚で書いていくいとうと、さらにその上を行くみうらのセンスにぐいぐい引き込まれてしまう。このシリーズの良いところは、いきあたりばったりの旅の要素と、みうらの何をしでかすか分からない先が見えない天然的な行動に目が離せないところ。 それでいて、仏像のウンチクはかなり専門的な分野にまで発展するので、思わずすぐにでも(仏像を)見に行きたくなってしまう。見仏記6は、私の地元でもある東海地方の円空仏も取り上げられており、龍泉寺や荒子観音の項を興味深く読んだ。 それにしても、みうらじゅんは私と同年齢とは到底思えない。これは良い意味で言っているのだが、子供の心をそのまま持ち続けていく大人のなんと素晴らしいことか。広く、みうらの作品に触れるにつけ、その表現や行き方への羨ましさがどんどん倍加していくのだ。
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