町田忍著「昭和レトロ博物館」を読んだ。著者はホーロー看板やかとりせんこう、納豆、銭湯などをテーマにしたユニークな著作を出している昭和文化研究家だ。
西岸良平の漫画「三丁目の夕日」のコンビニブックス版のコラムに連載されているときから目を通していたが、今回一冊にまとめられたことで、読み物としても重量感が出た。帯にある“失われゆく日常風景をリアルに再現”とあるように、昭和30年代の庶民生活をうまく切り取った内容は懐かしさに溢れている。
たとえば、最近見かけなくなった「赤チン」。僕の小学生の頃は、怪我といえば赤チンを塗ることがあたりまえだった。いつ頃から無色透明のマキュロンになったのか覚えてないが、赤チンを日の丸のように塗ったりして喜んでいたことを覚えている。
銭湯も懐かしい思い出だ。家には昭和45年ごろまで風呂がなかったので、銭湯通いは日課だった。午後3時から始まる一番風呂に行くと、頭に手ぬぐいを乗せたじいさんが、汗びっしょりになりながら湯船に浸かって浪花節をうなっていた。茶色く濁った薬湯には、桜吹雪のイレズミをしたおとっつぁんがじっと目をつぶって入ってたり、脱衣所では白黒テレビが大相撲を流していた。
フルーツ牛乳を飲みながら大鵬や柏戸の活躍を観ていた。あの頃の銭湯はそれこそ庶民の社交場だった。
そんな銭湯にもいつしか足を向けることがなくなり、ロバのパン屋も紙風船をいつもくれた富山の薬売りのおじさんも来なくなった。ゴザや座ぶとんを抱えて目を輝やかせながら観にいった野外映画もいつしかなくなった。
僕らが過ごしてきた昭和は、もはやセピア色のレトロになってしまったようだが、こうした本を読みながら、楽しかったあの時代を時々思い返してみるのも悪くない。
■最近観た映画
「男はつらいよ 知床慕情」第38作 山田洋次監督 日本 1987 DVD ☆☆☆☆★
「マジェスティック」フランク・ダラボン監督 米 2001 DVD ☆☆☆★★
■最近読んだ本
「城塞 上」 司馬遼太郎 文春文庫 ☆☆☆☆★
「読書歯車 ねじまき仕事」 椎名誠 本の雑誌社 ☆☆☆★
「昭和レトロ博物館」 町田忍 角川書店
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