僕にとっては目が話せない作家、百田尚樹の書き下ろし新作『海賊とよばれた男』を読んだ。
上下巻の大作ながら、一気読み。
物語の主人公は日本の石油王と呼ばれた出光興産創業者の出光佐三氏である。
裸一貫から日本を代表する企業である出光グループを作り上げるサクセスストーリーであるが、
その波乱万丈の“熱い”物語に、血肉が踊るほどの感動を味わうことができた。
人を信じるがゆえに、馘首をしない、出勤簿なし、定年制無し…という破天荒な社風は、社員を家族の一員として
信頼していく佐三氏(作品内では国岡鐵三)の信念に、武士道を漂わせた明治男の頑なな正義が見える。
こうした社風は平成にまで受け継がれ、出光興産は唯一の民族系石油会社として存続をしてきている。
百田尚樹の作品は、『錨を捨てよ』や『ボックス』、『風の中のマリア』や『聖夜の贈り物』、前作の時代小説の『影法師』にしかり、1作ごとに作風を変え、様々なカテゴリーへのチャレンジを意図的に行ってきているが、今回の作品は、ノンフィクションを十分に意識した企業小説、立志伝、評伝として、そのチャレンジが成功した出来になったと思う。
まさに“百田ワールド”。
『永遠の0』を読んだ人ならば、思わずニヤリとするサービス精神にも感心するだろう。
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