松本駅前のホテルを早朝出発。
無料の健康朝食がウリのホテルなのに、バイキングは中止され、弁当支給だった。
今では当たり前だが、玄関にはアルコール噴霧液が置かれ、フロントには透明ビニールのタペストリーが下がっていた。
コロナ対策とはいえ、ホテルのサービスもずいぶん変わってきている。
松本駅から北西に伸びる『じょうねん街道』を歩く。
歩道がない一方通行の道だが、通勤のクルマだろうかひっきりなしに背後から襲ってくる。
正面に見える雪が残る常念岳の特徴的なピラミッドの山容に心を躍らせながらも、後ろからクルマに追突されないかとヒヤヒヤしながら先を急いだ。
明科方面に向かう国道19号に出ると、しっかりした歩道もあって幾分気が楽になった。
左に蝶ヶ岳、常念岳を始め、後立山連峰につながる北アルプスの稜線を眺めながら梓川に沿って進んでいく。
8時を過ぎたばかりだというのに、早くも炎天下の様相。
汗がしたたり落ち、猛烈に暑い。
トラックが轟音を発しながらすぐ脇をひっきりなしに過ぎていく。
日傘と帽子が飛ばされそうだ。
31度をさす国道の温度計を横目に見ながら、ちょっとした日陰を見つけて休息。
靴下をぬぎ、まずは足のマメをチェック。
そして大量の水を飲む。
続けて即効性のエネルギー補給ゼリーをすする。
先月の末から2日ほど自宅で休養した以外は毎日25キロ以上を歩いてきたが、右足にできたマメが治るヒマがないほど、歩いてきた。
不思議に左足にはできないのに、右足は5本すべての指にマメができて、水泡が潰れるのを繰り返している。
歩き旅はマメとの闘いなのか。
登山をしていた頃も何度かマメはできたが、登山道と違ってアスファルトの道は勝手が違うようだ。
膝やふくらはぎにも負荷がかかるようで、筋肉痛との闘いでもある。
16キロ歩いて明科駅に到着。
駅前交番で、この先の国道403号線の状況を確認した。
連続するトンネルに歩道があるかが、一番の関心事。
もしなければ、命の危険にさらされることになる。
親切なお巡りさん曰く、
・トンネル内には歩道がある
・国道に沿って旧国鉄時代の廃線跡があるので、せっかくならこれを歩いてみたら
…という、うれしい情報をもらうことができた。
最後に、「歩き旅をしている」と言ったら、「この炎天下に、この山を越えていくというのは、ありえない」と言われてしまった。
ともあれ、熱中症に注意するように念を押され、交番を後にした。
お巡りさんおススメの廃線跡のコースは正解だった。
レンガ造りのトンネルは涼しく、センサーで反応した明かりも点いた。
線路が撤去された道は森林浴のオンパレード。
全長6キロの癒しの空間を味わせてもらった。
しかし、国道に出るとそこからが地獄の関門が待っていた。
ダラダラと坂を登っていく歩道がない国道は、交通量も多くひっきりなしにクルマがいきり立って疾走してくる。
歩道がないので、できるだけガードレールに寄りかかり歩く。
途中で道路工事の現場に差し掛かり、片側通行の区間となると道幅が狭まり、さらに緊張の度合いが増した。
そして、とどめは連続するトンネル地獄。
蛍光塗料が塗られた安全たすきとマスクを着けて突入。
歩道の幅は50センチ足らずで、人ひとりが歩けるのがやっと。
クルマは前後からトンネル内を轟音とともに走り抜けていく。
1本目は1200㍍。
長く続いた暗闇から出口の明かりが見えてようやく抜け出ると、排気ガスで頭がくらくらした。
その後、トンネルは2本続き、再び歩道が切れたカーブが続く国道を対向車を睨みつきながら歩き、ようやく歩道がある“安全圏”に出た。
日本列島を徒歩で縦断する旅の、最初の洗礼を受けた思いだった。
炎天下の歩き、歩道がない危険な国道、トンネル…日本の風土、道路は人にやさしくできていない。
それに覆いかぶさるように邪魔をするコロナの脅威。
それでも自分は一歩を踏み出してしまった。
中山道の鳥居本宿(滋賀県彦根市)から歩いた距離は300キロを超えた。
止めるなら今のうち、いや後戻りはできない…そんなことを自問自答しながら、下り坂になった歩道がない国道をJR西条駅に向かって黙々と歩いた。
4日間の予定で出た短い旅も1日早く切り上げることにし、松本駅経由で『特急しなの』に乗車し、帰宅した。
木曜日から梅雨入する可能性と、しばらく雨が続く状況を鑑みてのことだが、本音は炎天下の歩きと足の痛みからきた体のダメージを回復させるのが目的。
天候回復を見計らって、再び長野市、そして日本海を目指すことにする。
待ってろよ、“酷道403号線”(笑)
■2020年6月10日 長野県松本市~安曇野市~筑北村
■39466歩 25.65キロ
■晴れ

※常念岳を正面に見ながら歩く『じょうねん街道』。歩道がない一方通行路。

※国道19号線沿いで見つけた石仏

※安曇野特有の道祖神もあった

※国道19号。明科を目指す。歩道はあるが交通量は多い。

※国道19号。梓川に沿って歩く

※常念岳から大天井岳、燕岳の稜線が目に鮮やか。だが、炎天下とあって思いっきり暑い!!

※明科からは旧国鉄の約6キロ続く廃線跡を歩く

※廃線跡『三五山トンネル』

※トンネル内はセンサーが反応し明かりが点灯

※廃線跡は森林浴気分

※踏切跡も残っていた

※レンガ造りの『漆久保トンネル』

※“酷道403号線”の連続するトンネルを歩く

※今回のゴールJR西条駅。長野まであと48キロ。
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