一年があっという間と感じるのは、私だけでしょうか。
季節の移ろいの早さと年を取るということの寂しさを、今更ながらに実感します。
さて、当ブログにお越しいただいた皆様には、今年一年お世話になりました。
来年も良い年になることをお祈りします。
いろんなことがあった一年でしたが、今年も恒例の【初めて経験したこと】を並べてみたいと思います。
・中山道を完歩した☆☆☆
京都三条大橋から東京日本橋までの538㎞を2年越しで完歩。今年は塩尻~日本橋までを9日間で歩き終了。後半はいつものようにマメの痛みに苦しみ、あわよくば東海道も…と思っていたチャレンジは来年に持ち越すことにして帰還しました。
・初めて行った観光地…沖縄やんばるの森、辺戸岬、モネの池(岐阜県美濃市)
やんばるの森でヤンバルクイナに会いました。
・植物画(ボタニカル・アート)を始めた☆☆
通信講座で6月より開始。高校生以来の45年ぶりに絵筆を握り、楽しく受講中です。
・面接を受けたが不採用
ハローワークの紹介で7月と12月に地元行政の臨時職員の採用面接を受けましたが、7月は書類選考、12月は面接で不採用となりました。いずれも募集1人につき、数十人が応募する狭き門。年寄りはおよびでないのか…まぁ、仕方がないですね。
・ブリッジをつけた
昨年抜歯した奥歯にブリッジをつけました。当初はインプラントの予定で治療を進めていましたが、糖尿病悪化により見送り。結局ブリッジに。違和感もなく、快適に過ごしています。
・糖尿病は一進一退
一昨年の膵臓切除により発症した膵性糖尿病ですが、2月に悪化し、服薬治療を開始。しかし、副作用が出たので3ヶ月で休薬。現在は食事療法のみで数値は安定しています。間食を止めたのが大きいかもしれません。
・義父が亡くなった
1月に義父を亡くしました。無口で謙虚な人柄が素晴らしい人でした。
・献本プレゼントに当選した
読書アプリの「読書メーター」の年末企画で、丸山正樹著『ワンダフル・ライフ』サイン本のプレゼントに当選しました。
今年もコロナ禍に翻弄された一年となりましたが、無職生活も2年目に入り、“髪結いの亭主”よろしく、パートで働くカミさんの世話になって毎日を過ごしています。
年明けからは待ちに待った年金受給が始まるので、少しは肩身の狭さから解放されそうです。
コロナ禍の状況次第ですが、夏には日本縦断の残り、苫小牧~宗谷岬までの400㎞を歩きたいと思っています。
さて、来年はどんな年になるやら。
術後2年半が経ち、再発や後遺症(糖尿病等)の不安はまだありますが、体力が続く限り、いくつになっても"初めての経験"を求めて、チャレンジを続けたいと思います。
皆さまも、良いお年をお迎えください。

※ウォーキングで見つけたフィギュア
メインサイト『
琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★
↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪


スポンサーサイト
今年も残りひと月。
早いものです。
すぐそこまで冬の足音が来ている中、名残りの紅葉を見てきました。
目が覚めるような彩に、幸せな気持ちになりました。

さて、11月の読書ですが、小説離れが一段と進んだようで、ノンフィクション中心となりました。
読書冊数は久々の20冊超え。図書館利用で新刊を読めたのも良かった。
収穫は『アメリカンビレッジの夜』。沖縄の哀しい歴史と今を女性視点で鋭く論じた、今年のマイベスト1です。
11月の読書メーター読んだ本の数:21
読んだページ数:6480
ナイス数:2113
定年オヤジ改造計画の
感想不勉強なのでこの本で初めて『夫源病』を知った。そういえば私が早期リタイアしたとき、カミさんがよくその言葉を発していた。
定年オヤジ、家でゴロゴロ、家事をしない、結婚しない娘。育児もカミさんに押しつけていたっけ…まさにビンゴ、今の私そのものである。
つい先日も子供を産んでも働きたいという長男夫婦に“三歳児神話”をぶちまけてしまった。まるで私の明日を占うかのような展開に、心臓をわしづかみされたような焦りを感じながら読んだ。
悠々自適の老後の裏には棘があるのか。暇と孤独だけが友達というのは何としても避けなければ…。
読了日:11月30日 著者:
垣谷美雨
アメリカンビレッジの夜——基地の町・沖縄に生きる女たちの
感想ここは日本であって、日本じゃないのか…沖縄を旅した先日、やんばるの森に忽然と現れた米軍の戦闘訓練センターに驚いた。
沖縄に暮らす女性たちを軸に、沖縄が抱える数多の問題を歴史と現実からするどくえぐった努力作である。特に米軍基地の問題については、過去から頻発している性暴力事件を検証しながら日米関係のはざまに生きる沖縄の行く末に警鐘を鳴らしている。
最後まで読んで、日系4世の著者が基地反対の強い信念のもとにこれを書き上げたことを知った。
日本人ではなく、文中ではあえて沖縄人と表現した意味合いを理解しなければならない。
読了日:11月29日 著者:
アケミ・ジョンソン
家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像の
感想多くの事件ルポを読んできたが、ここまで犯人と向き合ってその実像を追ったルポは稀である。
著者は3年に及ぶ取材で、膨大な手紙のやりとりから始まり、複数の面会、最後は犯行時の遺留品まで譲渡されるという、ありがた迷惑ともいえる関係まで築いている。
しかしこれをもってしても「刑務所に入りたいから人を殺した」という不可解な人間性には迫れていない。掌で転がされ、煙に巻かれているようにしか見えないのだ。
犯人・小島一朗にとっての刑務所とは、生存権を認められる“安穏な家族空間”なのだろうか。犯罪者心理の闇はあまりにも深く暗い。
読了日:11月26日 著者:
インベ カヲリ★
潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景の
感想凄まじい生き方の、男の人生を見た思いだ。
ダイバーの吉田浩文氏は震災後すぐに津波被害者の遺体引き上げ作業を行った人物である。
仙台港に沈んだ自殺者や遭難者の遺体引き上げを手伝うちに、いつしか本業を圧迫し、倒産の憂き目に遭う。遺族から捜索費用を回収することができず負債が膨らんだことによるが、そんな苦境をものともせずに暗い海底に向かっていく。
津波被害者の捜索でヘドロの海に潜る姿は、もはや使命感を超越している。
この勇気と意地はどこからくるのか。粗い文章に不満は残るが、海に生きる真の男の強さを知った一冊であった。
【追記】会社の転勤で震災後の仙台に単身赴任し、6年を過ごした。その間、花を植える作業のボランティアで訪れたのがこの作品の舞台になっている宮城県名取市の閖上浜。当時はむき出しになった家屋のコンクリートの基礎やガレキがまだいたるところに残っており、そこに町があったことを物語っていた。今となっては懐かしいが、災害の無常さを実感せずにはいられなかった。
読了日:11月24日 著者:
矢田 海里
本棚三昧の
感想“人の魂、本棚に宿る” “人の本棚はとっても不思議”…いずれも似たような本の受け売りだが、当たっているように思う。
大げさに言えば、本棚を見ればその人の個性はもちろんのこと、人生の履歴までも垣間見えてしまう。本も個人情報とするならば、背表紙を通して無防備に溢れかえっているのだ。
私がこの本を手に取ったのは、覗き見趣味の何物でもない。その人をもっと知りたいという気持ちもあるが、それ以上に並んでいる本ばかりでなく、さりげなく鎮座しているフィギュアや雑貨、ポートレートまで目で追うのが楽しい。
これはやはり悪趣味だろうか。
高田純次がビニールひもで縛った本の束を持っている写真は、古本屋から仕入れた直後か、それとも処分しようとしているのか、解説がないので分からない。こういうのは読者サービスに欠け、配慮が足らないのでは。
本の雑誌社『絶景本棚』とどうしても比較してしまうが、全景のアングルがあったほうが、私のような下衆な覗き見趣味をより満足させてくれたと思う。
読了日:11月23日 著者:
失踪者の
感想“速攻登山”のごとく、前作『生還者』に続いて一気に読了。
掴み、伏線、ディテール、そして読後余韻を残す完成度は前作を凌ぐできである。
真山と樋口の出会いからの流れは、時系列ではなく前後が交錯するのでやや分かり難く感じるが、満腹になるくらい登攀シーンを描いてくれたので、山好きとしてはそれだけで嬉しい。
実力派の現役クライマー中島健郎氏のアドバイスを受けたというだけあって、垂直の氷壁にプロテクションのアイススクリューをクルクルと回して埋め込む姿まで見えてくる圧倒的な臨場感だ。
気になったのは樋口の山行歴。
ヒマラヤに挑むくらいの大きな目標をもったクライマーなら、多くの場合は実力に合わせてルートの難易度を上げる山行をしていくと思うが、時系列でみると、冬山縦走では白馬岳~槍ヶ岳~奥穂高岳の単独縦走の後、真山と組んだ中崎尾根~槍ヶ岳なっており、難易度はぐっと下がってしまう。
また岩登りでは谷川岳衝立岩単独登攀(夏季)の後は、同じく真山と登る八ヶ岳横岳西壁中山尾根(冬季)になっており、これも同様。中山尾根は冬季岩稜登攀の初級ルートである。
比較すると樋口が大学時代に行った冬季の西穂高岳~奥穂高岳の単独縦走の方が一般ルートとはいえはるかに厳しい。二人でザイルを組んだ山行の方が難易度が下がってしまうのはいかがなものか…。
できることなら二人で登るルートはもっと難易度が高いモチーフにして欲しかったというのが本音である。
どうしても山のことになるとムキになってしまうが、他意はないのでご勘弁を。
いずれにしても、山の世界を存分に楽しませてくれた著者に感謝したい。
読了日:11月22日 著者:
下村 敦史
生還者の
感想森村誠一、梓林太郎、太田蘭三に代表される山に殺人事件を持ち込む山岳ミステリは、中高年の登山ブームが始まる以前から量産され、笹本稜平に至っても大筋は似たような内容なのでここ数年は敬遠していた。
しかし、新たな書き手が現れたということを知り、手にしたのがこの作品。
ストーリーの構成や顛末は別として、気に入ったのが登山シーンのディテール。
アイスクライミングや冬山でのロープワーク、ギヤの操作は確かな技術を学習して描かれている。更にビーコンの操作も詳しく、雪崩捜索訓練の模様も。
また、沢登りの描写では底に水抜き穴がある沢登り専用ザックのことまで触れる念の入れようだ。それもそのはず巻末の参考文献には登山技術ガイドがずらりと並んでいる(私が執筆している編著もあった)。
御在所岳奥又ルンぜのアイスクライミングシーンが出てきたときには、心の中で思わず拍手。その昔、何度か登ったことがあるルートなのだ。
登場人物の登山家たちが冬の白馬岳や三ッ峠、七ツ釜といった入門的なルートから舞台がいきなりヒマラヤのカンチェンジュンガというのはものすごい飛躍なので苦笑しかないが、できればそこにチャレンジする過程として国内の剣や穂高あたりの冬壁の登攀くらい挟んでくれたら嬉しかった。
ともあれ、山岳小説の書き手としては合格点。次作『失踪者』も読みたくなった。
読了日:11月21日 著者:
下村 敦史
ナチの子どもたち:第三帝国指導者の父のもとに生まれての
感想国家社会主義の理想を忠実に掲げ、ニュルンベルク裁判で揃って無実を訴えたナチ戦犯たちは、残虐行為が平然と行われた現場にいながら家庭ではどこにでもいるよき父親を演じたという。
人間性を感じないこのギャップの神髄はどこにあるのか。ナチ戦犯ばかりでなく、記憶に残る稀代の殺人者にも父親の顔があったことを思うと、人が持つ底知れぬ闇の深さを感じずにはいられない。
おおよそ想像はついたが、ナチの子どもたちの戦後は苦難と失意の歴史であった。ユダヤ教への改宗、姓との訣別、隠棲、自殺…多くが差別に苦しみ父親を憎んで成長していくがグドルーン・ヒムラーについては父親に心酔し、姓に誇りをもち、ナチ戦犯の逃走を支援し、更にはネオナチたちと極右運動を煽動している。
自分たちの責任を後世に残さないことへの呵責からか、それとも自分を正当化するためのエゴイズムか、自死したヒトラーは偶然にも子孫を残さず、ゲッペルスは妻と6人の子どもたちと心中した。
哀しいかな、歴史が続く限りナチ犯罪の記憶が消え、係累たちの今後に霧が晴れることは決してないだろう。ドイツが犯した罪は、限りなく大きい。
読了日:11月19日 著者:
タニア クラスニアンスキ
ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)の
感想非行と障害が密接な関係にあることを教えてくれた一冊。
医療少年院に送致された少年の多くが、幼少時からの知的障害と認知機能障害をもっているという事実には驚く。多様化、低年齢化している犯罪と機能障害の関連性をさらに解き明かしていく必要性を感じるが、まずは大人たちが機能障害をただしく理解することが先決ではないだろうか。
私の身近にも認知機能障害の子供の育児に日々奮闘している人がいる。キレイごとかもしれないが、非行や犯罪に手を染めないように導いていくのは、行政や教育機関ではなく周りの大人たちの責務であると思いたい。
読了日:11月17日 著者:
宮口 幸治
魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣の
感想GDPを世界第二位に押し上げた高度成長の裏に、環境破壊と公害問題があったことは今ならだれもが知っている。
1970年代初めに水俣病訴訟が苛烈し国民の関心事にならなければ、公害の悪について学校で習うこともなかっただろう。
本書は水俣病と外国人写真家という、結びつくこともない次元がまったく違う二つの視点を追っていくが、紆余曲折のプロセスの中で見事に融合し、写真集『MINAMATA』に結実していくストーリーである。
難航する水俣病訴訟には、外貨を稼ぐ大企業を擁護せざるを得ない当時の国力の弱さが見て取れるし、社員を単なる使い捨ての労働力として扱う陰険な実態を浮き彫りにしている。
ユージン・スミスのジャーナリストとしての信念と正義感、そして飽くなき追及心と表現力は、最期の仕事と捉えた水俣に向き合うことで完結したのだろうか。
『ライフ』誌への投稿掲載によって公害問題の深刻さと不条理の実態が発信されたことにより、人類に警鐘を鳴らす一端を担ったことはジャーナリズムの影響力の大きさゆえんである。
しかし、優柔不断で人間性が欠如しているかに見えるユージンの投稿が信念に基づく行為だったのか、影響が想定外の産物だったのかは分からないが、妻アイリーンとの二人三脚がなければ成しえることができなかったに違いない。
映画『MINAMATA』を観なければ本書を手に取ることはなかったが、水俣を象徴する写真『入浴する母と智子』はずっと以前から知っていただけに、映画では何よりもその撮影秘話が、美しい映像として語られたことに目を奪われた。
併せて、本書によって水俣への印象が増したことに感謝したい。
読了日:11月16日 著者:
石井 妙子
ヒロシマを暴いた男 米国人ジャーナリスト、国家権力への挑戦の
感想ジョン・ハーシー著『ヒロシマ』は読んでみたい一冊。
1946年に『ニューヨーカー』に電撃掲載された元記事は、ハチの巣をつつくほどの大騒ぎになった世界を揺るがす大スクープである。
ルポ出版の裏にはアメリカ政府による原爆の実態を隠ぺいする権力との闘いがあり、出版後には原爆投下の正当性を問う世論が国を覆う。
更に、原爆の破壊力と脅威を知ったソ連は原爆製造に拍車をかけ、核戦争時代の幕開けとなっていく皮肉な側面も。
一人のジャーナリストの信念によって人類全体の未来を案じて書かれたルポには、哀しい二面性を感じた。
全世界の国や人々の心を動かしていくペンの持つ力のプロセスに感動したが、反面、抑止力の名のもとに軍備拡大を助長する危険性を孕んでしまったことに驚いた。
広島への原爆投下は戦争を終わらせるための手段だったのか、製造過程の実験として使われたのか謎のままであるが、破滅へ突き進む一億玉砕の名のもと原爆投下を許した日本と、手を下したアメリカの罪はどちらも限りなく重いと言わざるを得ない。
本書は核問題の根源を考えさせてくれた作品であった。
読了日:11月14日 著者:
レスリー・M・M・ブルーム,高山 祥子
レストラン「ドイツ亭」の
感想これが処女作というから驚きだ。完成度の高さと一気に読ませる構成力に舌を巻いた。
舞台は1963年のドイツ・フランクフルト。過去の過ちを直視し、克服することを選んだドイツが、自らナチスの犯罪を暴いたアウシュヴィッツ裁判が物語の背景となっている。
フィクションなので実名は出てこないが、裁判を主導したフリッツ・バウアー検事長の存在も見え隠れしている。
主人公の女性や家族、恋人、周辺の人々が引きずるホロコーストの因果に胸が締めつけられる。出口がない長いトンネルに足を踏み入れたような、暗く閉塞的な圧力を感じる作品だった。
読了日:11月12日 著者:
アネッテ・ヘス
木村政彦 外伝の
感想昨年、鹿児島県佐多岬を目指す日本縦断の歩き旅で熊本県川尻町を通過した際、歩道橋に掲げられた『木村政彦生誕100年』の横断幕を目にし、心の中で手を合わせた。
『木村政彦はなぜ~』を読んでいなければこの不世出の柔道家のことを知る由もなかったが、木村の存在はいつしか私にとって“心のヒーロー”になっていたことに気づかされた。
木村を知ることができた前著はそれくらいインパクトのある作品だったようだ。外伝の本書では対談を軸に本には書けない木村の人となりまで切り込んでおり、私のもつ木村の魅力がさらに増幅するのを感じた。
木村の柔道人生で横道に逸れた時期にめぐり合わせた力道山との試合などどうでもよく思えてくる。生きていくために柔道一本で勝負できなかった木村の誤算(?)や悔しさ(?)が、戦後復興と高度経済成長に翻弄された時代のいやらしさに重なってくるからだ。
対談では木村フリークの吉田豪が語る木村武勇伝が面白く、その豪快さも常人の域を突き抜けていたことに、もはや拍手しかなかった。
読了日:11月11日 著者:
増田俊也
たくましくて美しい 糞虫図鑑の
感想表紙の写真はルリセンチコガネ。マニアなら誰もが知っている垂涎モノ。輝く一粒の宝石のようなこの虫は奈良公園のシカの糞に集まる糞虫である。
1200頭のシカがいる奈良公園では毎日1トンの糞が生産され、糞虫たちがせっせとそれを食べて分解する食物連鎖がある。アフリカの草原でもニュージーランドの牧場でも同様。糞虫がいなければ動物の糞だらけになってしまうからその役割は大きい。
糞虫に魅せられた著者は、脱サラして奈良に糞虫専門の博物館を造るまでの熱の入れよう。美しく奇抜な虫たちの図鑑を眺めればその心意気が伝わると思う。
読了日:11月10日 著者:
中村圭一
太陽のかけら ピオレドール・クライマー 谷口けいの青春の輝きの
感想辛気臭い遺稿集ではなく、明るい立志伝として読んでみた。
今から15年ほど前、社会人山岳会で沢登りや岩登りに明け暮れていた頃、 谷口けいというめっぽう強い女性クライマーがいることを仲間たちからよく聞いた。
山の世界は広いようで狭い。登山用品店や山屋の集会でも彼女の動向が話題に上ることがあった。
いつしか日本を代表する登山家になった彼女が大雪山系黒岳で遭難したという報道に接してから早6年が経った。
彼女のザイル仲間である著者が綴ったこの本には、太く短く人生を駆け抜けた個性あふれる女性の姿が余すことなく描かれている。
読了日:11月09日 著者:
大石 明弘
老後の資金がありません (中公文庫)の
感想コミカルだが、笑えない。定年を迎え年金生活に突入する私にとっては他人ごとではないのだ。
年寄りにやさしくない今の社会、老後不安がカネと直結するのはやるせないが、これが現実だからしょうがない。
カネがなければ生きていくのもままならぬ。娘の結婚や親の介護、失業、年金詐欺など、この作品ではカネに翻弄されながらもおいそれとは壊れない主人公と家族の絆を描いているのが救いだ。
葬儀にかかるリアルな試算には、見栄を捨てることと、カネをかけない家族葬にすることを改めて学習できたことに感謝。老いた父にもう一度話しておこう。
【追記】天海祐希主演の同名映画を観てた。ストーリーは脱線し、ドタバタ劇で終わった。原作が面白かっただけにちょっと残念。 救いは天海祐希と松重豊のやりとり。良い夫婦を演じていたと思う。
読了日:11月08日 著者:
垣谷美雨
ヤマケイ文庫 どくとるマンボウ青春の山の
感想既読のエッセイが多いが、透明感溢れる瑞々しい文章は何度読んでも心が和む。
本土決戦を前にした松高時代の終戦間際、死を漠然と予感しながらも徳本峠を越え上高地を彷徨うやるせなさは、読む側にとっても万感の思いが交錯する。
『白きたおやかな峰』で描いたカラコルムディラン峰のエッセイはコックのメルバーンとの交流をユーモアで綴っており、一転して『どくとるマンボウ昆虫記』に収録された高山蝶や上高地の描写は清冽かつ抒情的。
著者がもつ二面性の魅力が出ている。松高時代の歌集『寂光』は初心な純真さと青春の陰が表現されており秀逸。
読了日:11月08日 著者:
北 杜夫
わたしはナチスに盗まれた子ども:隠蔽された〈レーベンスボルン〉計画の
感想ユダヤ人を始めとした劣等人種と呼ばれる人々を皆殺しにしたホロコーストがコインの表面なら、純血アーリア人種を増産するレーベンスボルンは裏面。
対極をなすナチスの極悪非道の戦争犯罪である。本書は生後9ヶ月で旧ユーゴスラヴィアから拉致された著者が出自の謎を解き明かしていく衝撃のノンフィクションである。
その50年にも及ぶ過程でレーベンスボルン計画の実態とおぞましさ、それに翻弄された多くの人々の悲しみと怒りが露わになっていく。
親衛隊トップのヒムラーという一人の狂信者によって生み出された不幸は、あまりにも大きい。
読了日:11月04日 著者:
イングリット・フォン・エールハーフェン,ティム・テイト
最後の読書 (新潮文庫)の
感想そろそろ最終コーナーに差しかかった私には、他人事ではない。
残りの読書人生をどう送るか?これは悩み多き問題。
80歳を過ぎた著者は日々この悩みを抱きながらもワッセワッセと精力的に本を読みこなし、原稿を書く。まったく感服。
病床の鶴見俊輔は死の間際まで読むことにこだわり、紀田順一郎は蔵書を手放す無念さを嘆く。
目が衰えるまでにあとどれだけ読めるか。あれも読みたい、これも読みたい…私にとって五体に染みついた読書習慣はもはや衣類と一緒。決して脱ぐことはない。
知識欲を掻き立てる本がある限り、どんどん着ぶくれしてやろう。
読了日:11月03日 著者:
津野 海太郎
にっぽん醤油蔵めぐり (かもめの本棚)の
感想全国に1200あるといわれる醤油蔵は、酒蔵と並んでノスタルジーに浸ることができる空間だ。
醤油独特のすえた匂いとピンと張りつめた空気には冒してはならない神聖なものを感じる。
本書は醤油に魅せられた著者が45の蔵を厳選し、店主から醤油造りのこだわりを聞き出している。震災の津波で被災して再建した蔵の苦労や、夫婦二人で営む小さな蔵では代々受け継がれた伝統を守っていく姿勢に醤油づくりの心意気が伝わってくる。
私はホーロー看板の撮影が目的で醤油蔵を巡っているが、本書を参考に蔵の主人と話ができたら、楽しみも倍加すると思う。
読了日:11月02日 著者:
高橋 万太郎
蝉かえる (ミステリ・フロンティア)の
感想神出鬼没で天然キャラの昆虫マニア・魞沢泉が活躍するシリーズ二作目。
素人然とした前作から明らかに“脱皮”した筆力に素直に驚いた。前作ではワンポイント程度の絡みしかなかった昆虫のプロットも「ホタル計画」や「サブサハラの蠅」ではストーリーの重要な要素として主役級に扱っているところが嬉しい。
少年期、学生時代と過去を小出しに遡ることで、謎多き魞沢泉の人間性を少しづつ見せているのは読者サービスだろうか。
単なるとぼけたキャラでは収まらない魞沢の魅力が緻密な構成で一層引き立つ、見事なチェーンストーリーに仕上げている。
読了日:11月01日 著者:
櫻田 智也
読書メーターメインサイト『
琺瑯看板探検隊が行く』もどうぞご覧ください★
↓♪ 良かったらポチッとお願いします ♪

