めちゃくちゃ暑かった8月。
青春18きっぷを握りしめてカミさんと行った大阪への小さな旅を除けば、病院に通ったくらいで、それ以外はほぼどこにも行かず、何もせずにゴロゴロと過ごした8月だった。
検査を受けた徐脈と不整脈の結果が気になって、ずっとやきもきしていたからか、読書には集中できず13冊で終了。
それでも今年はいつにないハイペースもあって、8月終わったところで103冊の大台越えとなった。
さて、まだまだ残暑が厳しい9月ですが、深まる秋を感じつつ、本格的な読書モードに突入したいと思います。

※本文とは関係ありません
8月の読書メーター読んだ本の数:13
読んだページ数:4512
ナイス数:700
東海道でしょう! (幻冬舎文庫)の
感想昨年18日間かけて完歩した東海道。五十三次の一コマづつの風景を懐かしく思い出して読んだ。
一緒に行動しながらも著者それぞれの視点と思い入れが違うので新鮮である。
文学や歴史のウンチクが豊富な杉江氏は宿場にちなんだ作家や史跡を詳しく紹介しており参考になる。
歩くことに集中して資料館等に立ち寄らなかった自分の旅がずいぶん勿体なく感じた。
かたや藤田氏のルポは、足が痛い、バテた、もう嫌だ、泣いたり、マッサージとか…ネガティブな連続にうんざり。
更に話題も食べることばかりなので「アンタ、何で歩いてるの?」と問いたくなった。
読了日:08月27日 著者:
杉江 松恋,藤田 香織
運命の旅の
感想抑揚がない文章、更にドラマチックな内容に関わらず自己の精神性や宗教観を投影した表現が多いので難しく感じる。
ナチスドイツからの逃亡を目指したヨーロッパ、アメリカを巡る流転の旅は、ドイツを取り巻く戦時中の国際情勢が描かれており興味深い。
運よく亡命できたのは著者もまた一握りの恵まれたユダヤ人であるが、ユダヤ団体からの生活支援を受けながらもカトリックに傾倒し受洗する。
ユダヤ教を信じず、祈りや神について考察していたことがその理由だが、本書において、信教とは、ユダヤ人とは何かという根源的な疑問を突きつけたように思う。
読了日:08月21日 著者:
アルフレート・デーブリーン
ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 (海外文学セレクション)の
感想メンゲルがヒトラーに命じられるまま忠実に職務を行ったという主張はアイヒマンと共通するが、本人には大量殺人であるという認識はなく、人体実験を楽しむサイコパスの本性が浮かぶ。
骨の髄までナチスなのか、職責を国や医学の進歩に転嫁する神経は保身以上である。
ナチ戦犯の逃亡を手助けする地下組織が戦後何十年も南米にはびこっていたことは国際秩序をバカにしているが、多くの証拠や情報がありながらメンゲルの逃亡を許した捜査の手ぬるさは、責められても仕方がない。
逃亡に疲れ、死を恐れ生にしがみつく晩年の姿は哀れというほかなかった。
読了日:08月20日 著者:
オリヴィエ・ゲーズ
狼の幸せの
感想前著『帰れない山』と『フォンターネ』を読んだ身には、優しさにうっとりと包まれる、あの心地よい感触を三度味わうことができたことが何よりも嬉しい。
流れに身を任せるように気負わず、あくまで自然体に過ごす主人公ファウストのフォンターナ・フレッダの四季が、心にしみ入る感触で迫ってくる。
山や自然の美しい描写を書かせたら右に出る者はいないと思えるくらいだ。
お互いの体をザイルで結ぶファウストとシルヴィアの氷河のコンティ二アス歩行は、頼りなくも細い命綱だが、そこには決して切れることがない二人の深い愛情と絆を読み取れた。
読了日:08月18日 著者:
パオロ・コニェッティ
異貌の人びと ---日常に隠された被差別を巡るの
感想海外の被差別民や迫害の実態が、日本の路地を含めた下層社会にある独特な問題と比較できるとも思えないが、そこに共通するのは、どこの国においても差別されてきた人々が存在する(した)という事実だ。
スペインのカゴやヨーロッパのロマもしかり、カーストや人種、職業、信教による差別が表面的には撤廃したとされる国においても、差別する側の人々の意識から消さない限り、差別は根深く生き続ける。
ルポは2000年代のものなので少し古いが、実弾が飛び交うパレスチナやネパールの内戦を取材した突撃ルポは、生々しく、読み応えがあった。
読了日:08月16日 著者:
上原 善広
クスノキの番人 (実業之日本社文庫)の
感想ずっと敬遠してきた東野作品を『ナミヤ雑貨店』以来6年ぶりに手に取った。
テンポよくサクサクと読めるのは“東野節”ならではだが、ミステリではないのでやはり物足らない。
良くいえば、安定したストーリーテラー。悪くいえば、キレが無く野暮ったい。
内容は緊張感もなく、いたって平和的にストーリーが展開する。後半に入るとおおよその結末まで読めてしまうので、心の躍動も感じないし、盛り上がりに欠けたまま終わってしまう。
クスノキ内部の描写や到底考えられない会議乱入など不自然な部分もあり、もう少し丁寧に書いて欲しかったところだ。
読了日:08月14日 著者:
東野 圭吾
「ウルトラQ」の誕生の
感想1966年に放送された『ウルトラQ』を当時小学生だった私はリアルタイムで見た。
記念すべき第一話『ゴメスを倒せ!』の視聴率はなんと32.2%。
白黒だったが、オープニングテーマ曲や石坂浩二のナレーションも斬新で、怪獣をテレビで毎週見ることができるという嬉しさで心が躍った。
本書は番組の企画段階から制作秘話を織り交ぜて、マニアックすぎるほどの熱意で取材している。
幼稚園児だった著者はいまだに映像が焼き付いているというから、当時の少年たちを熱狂させたのもうなずける。
ガラモンやカネゴン、M1号…昭和の世界が愛おしい。
読了日:08月12日 著者:
白石 雅彦
山と渓に遊んでの
感想沢登りを通じて交流があった著者の作品。
秋田での幼少期から山を始めた青年期、浦和浪漫山岳会の結成、フリーとなった現在の活動について綴っている。
登山家には非凡な文章力をもった人が多いが、著者は現役の山岳ライターの中でもトップクラスだ。
抒情感溢れる文章も良いが、1997年にACC-J茨城の故・本図一統氏と挑んだ黒部川剱沢大滝の登攀は今読んでも手に汗握る。
本図氏とはクライミングをご一緒し酒を飲んだことを思い出す。
多くの名クライマーが鬼籍に入ってしまったが、高桑氏は唯一無二の沢屋のレジェントとして頑張って欲しい。
読了日:08月12日 著者:
高桑 信一
うかれ女島 (新潮文庫)の
感想モデルのW島がうかれ女島と呼ばれていたのか興味本位で調べてみたが、そんな記述も見当たらないので、どうやら創作のようだ。
だとしたらこれは本書を読む上でも的を得たネーミングだと思う。
東電OL事件を絡ませたり、ミステリ仕立ての盛り沢山の要素を突っ込み過ぎて、最後は無理にまとめた感もある。
娼婦の母を憎んでいた息子が亡き母の思いを知った場面で終わっても良かったのでは。
極論のようだが「男に復讐したいなら、娼婦になればいい。屈服させ、支配し、勝利するんだ」この言葉に、性の解放と女性差別への憤りが込められていると思えた。
読了日:08月08日 著者:
花房 観音
ナチスと映画―ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか (中公新書)の
感想ナチスやヒトラーをモチーフにした映画が現在でも量産されているのは何故なのか、ずっと疑問に思っていた。
捉えどころがない虚像と実像を悪の象徴としてばかりでなく、チャップリンの『独裁者』ではその蛮行を茶化すことで批判しているのが面白い。
様々な解釈と角度から描くことができるのは、人々を惹きつける魅力的なモチーフだからこそだろう。
映画をプロパガンダの手段として使ったナチスが、戦後はプロパガンダの道具として、多くの映画に描かれたのは皮肉なめぐり合わせである。
ヒトラーの一挙手一投足もプロパガンダの産物だったのだろうか。
読了日:08月07日 著者:
飯田 道子
完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件の
感想豊田正義著『消された一家』を読んでいたので、この事件の概要は知っていたが、綿密な周辺取材のもと、圧倒的なスケールで書かれた内容に改めて戦慄を覚えた。
著者は『人殺しの論理』でも触れているが、主犯・松永との面会やその後の手紙のやり取りにおいても、蛇に睨まれた蛙のような精神的なストレスと恐怖心を抱いている。
緒方が殺人に手を染めたのは、サイコパス松永の支配によるものだけとは思わないが、松永さえいなかったらこの事件はなかったはずだ。
今だに松永の死刑は執行されておらず、遺族の心情と被害者の不憫を思うと胸が痛む。
読了日:08月06日 著者:
小野 一光
復讐者たち〔新版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)の
感想2021年公開の同名映画はユダヤ旅団やナカムによる報復活動を中心に描かれたが、原作を読むとこれはエピソードのほんの一部でしかない。
ユダヤ人はナチの不条理に対して決して羊のようにおとなしく殺されたわけでなく、戦時中の早い段階から抵抗活動があったが、事実があまり前面に出てこなかったのは、強固なナチスのイメージを創るためのプロパガンダによるものだと分かった。
ナチ戦犯のアイヒマンの拉致やボルマン、メンゲレの逃亡とそれを追うイスラエル諜報員の追跡はさながらスパイ小説のようにリアルだが、反ユダヤ団体のみならず、いまだに戦犯を援助し続けるナチの地下組織が存在していることには驚く。
これがネオナチや極右勢力と結びついていくのもファシズムの怖さと感じる。
非合法を含めた復讐者たちの行為を“目には目を”のごとく正義として受け止めることができるのか、感情のおもむくまま同感したいが、すっきりとは正当化できない自分である。
読了日:08月04日 著者:
マイケル・バー゠ゾウハー
ある行旅死亡人の物語の
感想一人旅が好きで登山や歩き旅を楽しんでいるが、たえず気にしているのが万が一のこと。
遭難や旅先で行き倒れ、身元を証明できなければ無縁仏になるという、そんなリスクだ。
単身世帯が大多数を占め孤独死も増えている今、隣人が誰かも分からないという無縁社会では、本書の内容は決して特殊な事例ではない。
家族との関係を断ってひっそりと暮らす人もいるだろう。
死亡した女性が残した小さな手がかりをたぐり、ようやく身元判明に辿り着いても、謎は残りすっきりとしない。
これ以上の詮索はしないで欲しいと、まるで故人が拒んでいるような気がした。
読了日:08月03日 著者:
武田 惇志,伊藤 亜衣読書メーターメインサイト『
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