佐多岬にゴールする日を迎えた。
泣いても笑っても、今日が最終日だ。
歩行距離が35キロを越えそうなので、午前6時前に出発。
根占の町は、まだ寝静まっている。
星が瞬く暗闇である。
ザックに点滅ライトを設置し、ヘッドランプを着けて国道269号線を一時間ほど歩き、道の駅ねじめを過ぎた頃、長かった夜がようやく明けた。
歩を進めるにつれ、刻一刻と開聞岳が間近に迫ってくるのはレベルの高い美しい映像を見るようで退屈しない。
やがて雨が降り出したが、20分ほどで止んだ。
すると、開聞岳に巨大な虹がかかったではないか。
シャッターチャンスとばかりに、スマホで撮りまくったが、あとで確認すると一枚もまともなものはなかった。
国道269号線は伊座敷の集落で終わりとなるが、その前に現れたのが伊座敷トンネル。
最近開通したバイパストンネルであるが、これまでの縦断の旅で経験したトンネルのなかでは最長だった。
海岸線を行く旧道は展望も良くそそられたが、ここは時間短縮を狙ってトンネルに突入することにした。
しかし、その選択は100メートルも行かない内にすぐに後悔することになる。
なんと2000メートル以上もあるではないか。
トンネルの入口に全長を示す標識がなかったので、まさかこれほど長いとは思わなかった。
救いは、しっかりした歩道があること、トンネル内が明るいこと、そして何よりも交通量が少ないことであった。
しかし、さすがに30分近くも歩いていると、マスクを着けていても排気ガスで頭がクラクラするし、逃げ出せないという閉所恐怖は心臓に悪かった。
トンネルをようやく抜けると、出口すぐにはAコープがあり、駐車場にいたご老人から声をかけられた。
「海岸を歩けば良かったのに。景色も良いし」
ご老人はトンネル内を鬼の形相で必死に歩いている私を見たそうだ。
表情など暗くて見える筈がないのに…と思ったが、心配してくれただけでもありがたかった。
伊座敷集落から県道68号線に入ると、道はどんどん斜度を増して息が荒くなってきた。
汗が止まらない。
野球帽はびしょ濡れだ。
やっとのことで峠を越えると、今度はどんどん下って、大泊の集落に出た。
今日の宿泊はここにある『ホテル佐多岬』なので、ホテルに立ち寄って、佐多岬に到着後のお迎えをお願いした。
さすがに歩いて往路を戻る根性はないので、快く引き受けてくれてありがたかった。
さて、佐多岬までの最後の6キロである。
道はすぐに急勾配になり、咲き乱れるハイビスカスに目をやる余裕もなく、息を切らせて歩く。
午後13時30分。
佐多岬駐車場に到着。
そのままトンネルをくぐり、展望台へ。
13時45分、佐多岬灯台を望む最先端に到着した。
この日のために用意していた『日本列島徒歩縦断 佐多岬到達!!』と書いたPOPをザックから取り出し、その場にいた10人ほどの若い男女のグループに撮影を頼んだ。
彼らは私が掲げたPOPを見て、
「マジで歩いて来たんですか!」…と言って、
私が「北海道から歩いてここまで来た」と応えると、
あろうことか、その場で拍手が上がった。
拍手が拍手を呼び、やがて大きな輪になっていった。
予期せぬ温かい拍手に、年甲斐もなく、感激が込み上げてきた瞬間だった。
■2020年11月18日 鹿児島県南大隅町
■49628歩 32.25キロ
■ホテル佐多岬
■晴れ一時雨

※夜が明けると、開聞岳がすっきりと見えた。

※幕末に薩摩潘が設置した砲台跡があった。

※大川の『田の神』という石仏があった。

※美しい映像を見るような開聞岳の姿。

※龍の尾のような佐多岬の稜線が見えた。


※突然の雨が止むと、開聞岳に虹がかかった。

※佐多岬まではまだまだ遠い。

※全長2000メートル超えの伊座敷トンネル。右は旧道のトンネル。

※トンネル内部。これでまだ半分だ。

※県道68号線に入ると、傾斜が増した。

※森と海に挟まれた小さな集落が見えた。

※素晴らしい景色を見ながら歩く。

※開聞岳はずっと傍らにあった。

※大泊。佐多岬に向かうパークロードのゲートをくぐった。

※佐多岬に向かって海岸線を歩く。

※道は傾斜を増し、素晴らしい景観となった。

※佐多岬の駐車場の直前にある北緯31度線の碑の前で。

※トンネルをくぐり、佐多岬展望台に向かう。

※素晴らしい展望が広がった。

※展望台から見た開聞岳。

※展望台で。長かった旅が終わった。次は残した宗谷岬を目指す。
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佐多岬到達!おめでとうございます(≧▽≦)!
その達成感たるや、いかばかりかと思うと羨ましい気持ちです!
オイラもコロナでいじけてばかりいないで、勇気の一歩が踏み出せるよう頑張りたいです。
つ、ついに念願の佐多岬にゴールしましたね!!おめでとうございます\(^o^)/
自分の足で歩いた日本列島はもうほぼ庭みたいな感覚になるんじゃないですか!?
あとは来年苫小牧から宗谷岬へ行くだけですね!
佐多岬到達おめでとうございます!
よくぞ2本の脚でたどり着きましたね。
日々、ブログを拝見しておりましたが、
充実感!達成感!うらやましい限りです。
来年の北海道の旅を楽しみにしております。
路傍学会長拝
佐多岬到達おめでとうございます👏
新しい展望台ができたようで景色がよく見えるようになっているので驚きました。
私が9年前に佐多岬に到着した前日に日本縦断歩き旅で佐多岬に到着した人がおられて地元の新聞に掲載されていました。
その新聞をホテル佐多岬で読んでちょっと複雑な気持ちになったことを思い出しました。
来年は「北の大地の歩き旅」楽しんでください。
佐多岬到達、おめでとうございます。
ホテルに荷物を預けて空身で歩いたのでは?
キツイ坂道、登れば下る。苦あれば楽あり。これまた、迎車ありとは想いもしませんでした。車窓からの景色もまた格別かと!
さて、宿での祝宴。御膳の味噌汁に〝カメの手〟入っていませんでしたか? コレがまた美味!
んー、佐多岬到達を祝って共に一献いきたいところでした。
来春の宗谷行きを楽しみにしております。
コメントありがとうございます❗
コロナのことを考えてていると憂鬱になりますが、やれる範囲でチャレンジしたいですね。
ヒラメさんの旅の続きを楽しみにしています。
コメントありがとうございます❗
これで今年は一区切りしますが、また新たな旅の計画を進めながら、残りの宗谷岬を目指します。
引き続き、応援よろしくお願いします。
コメントありがとうございます❗
旅を通してホーロー看板を探していましたが、国道歩きが中心で不本意なものになってしまいました。
充実感はありましたが、まだ中途半端なので、次も頑張りたいと思います。
コメントありがとうございます❗
ホテル佐多岬の方に聞いたら、歩き旅の人もかなり多いということでした。
前日に泊まった根占のホテルでは今年は正月に泊まった人を除いて私が初めてと言ってました。
コロナの影響は計り知れないですね。
来年はわだかまりもなく楽しく旅をしたいものです。
コメントありがとうございます❗
ザックを背負って展望台まで上がりました。
そこまでは責任なので(笑)。
迎車はラッキーでした。
ホテル側に余裕がなければ無理のようでした。
泊まり客はほとんどいなかったようですが、美味しい料理を食べさせてもらいました。
カメノテはなかったですが。
食べてみたかったですね。
日本徒歩縦断達成おめでとうございます!!
「伊座敷トンネル」なんてできたんですね
しまった!の感じがにじみ出ています
こういうのが思い出に残りますね
コメントありがとうございます!
持参した地図になかったので事前情報はゼロでした。
それほど起伏がないので自転車でしたらそんなに負荷はないかと思います。
歩きは、気合がいりますね。
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