ちょっとしたトラブルに巻き込まれ、読書に集中できなかった2月。
低調なままひと月を過ごしてしまった。
収穫はディーリア・オーエンズ著『ザリガニの鳴くところ』。
全米で500万部を売り上げたというベストセラー。
気分が沈んでいるネガティブな日々のなかに、読書の楽しさという束の間を味わせてくれた作品だった。
2月の読書メーター読んだ本の数:5
読んだページ数:1583
ナイス数:302
歴史修正主義-ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで (中公新書, 2664)の
感想真実の歴史を知っているのは、その場に居合わせた当事者のみである。文字通りの生き証人だが、歴史家を名乗る外野の人々が、自分の主張に都合の良い事実だけを並べる自らの利益と歪曲した利己主義によって、真実が否定されてしまう。ホロコースト否定論はその極たるものであるが、南京事件や慰安婦、桜やキムチの起源に例えるまでもなくそうした事象は転がっている。歴史修正主義を生み出す社会の側についても考える必要性と、背後にある政治的意図や経済的利害を読み取る力も必要である。一筋縄ではいかないが、正しい歴史教育のありかたを感じた。
読了日:02月24日 著者:
武井 彩佳
ザリガニの鳴くところの
感想重量感のある読書を堪能した。生物学者の著者ならではの自然や鳥、生物たちの描写は秀逸。物語の重要な要素としても鍵を握っており、その心地よさが読書の楽しさを倍増させてくれた。それにしても本作に描かれた1960年代のアメリカの差別は想像以上だ。人種ばかりでなく、貧困や住む土地など、普通の人々と違うことがあらゆる差別となって現れていたようだ。先日観たスピルバーク版の『ウエストサイドストーリー』も、NYのスラムを舞台に、プエルトリコ移民と貧乏白人たちの差別を根っこにした物語だった。差別がない世界を切に望みたい。
読了日:02月19日 著者:
ディーリア・オーエンズ
ヒトラー独裁下のジャーナリストたち (朝日選書)の
感想ナチスのプロパガンダ戦略の片棒を担いでしまったジャーナリズムの統制は、ヒトラー独裁国家主義の象徴的な負の遺産である。認識を新たにしたのは、ドイツジャーナリズムの崩壊がナチス台頭以前から起こっていたということ。そこにはナチズムの過小評価による隙があったという。言論の自由を奪われた新聞の廃刊は、多くの有能なジャーナリストを国外に逃亡させ、ある者は収容所で命を絶つ。自由主義の終焉が狂信的な一人の独裁者によって起こされた歴史は、偶然ではなく必然であった。今の世にもそんな国家が存在している事実はあまりにも恐ろしい。
読了日:02月15日 著者:
ノルベルト フライ,ヨハネス シュミッツ
娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件の
感想読み進むにつれ腹立たしさと後味の悪さが込み上げてきた。14歳の少女を死に追いやった加害少年たち、校長、教頭、担任教師(通称:デート教師)。必殺仕事人がいれば、間違いなくコイツらは闇に葬られる標的である。中学校と旭川教委の隠ぺい体質も文春の取材によって明らかになっていくが、都合の良い選抜者からなる第三者委員会設置に煙に巻かれ、この先の追及が中断しているのは残念。更に、少年法に守られた加害者たち。インタビューの突っ込みも生ぬるい。みじんの反省もなく責任転嫁し、薄ら笑いを浮かべる親子。嫌なものを読んでしまった。
読了日:02月07日 著者:
文春オンライン特集班
大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた (幻冬舎新書)の
感想京都人の著者の大阪に対する思い入れは感じるが、最後までその立ち位置が分からなかった。あとがきで大阪の品が悪い部分をとりあげ、面白おかしく揶揄するのはやめてもらいたいといいつつ、文中ではその部分をしつこく取り上げているのはなぜか。そもそもタイトルからして「おもろいおばはん」はこうしてつくられた…なのだから。私の亡母は大阪出身だったが、周りの人たちも含めて“おもろいおばはん”はいなかったと思う。大阪のイメージを下衆な方向に固定化してしまったメディアの責任は重い。ついでに、平仮名多用の文章も読み難くかった。
読了日:02月04日 著者:
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