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日本縦断徒歩の旅を終えて

2020年からスタートした日本列島を縦断する歩き旅が、7月9日に北海道宗谷岬にゴールしたことでようやく終わった。
コロナ禍に翻弄され迷走した旅であったが、のべ106日間、2800㎞を歩き通し、無事に完遂できたことに深く満足している。
歩いて日本列島を縦断するという、私にとって少年時代から憧れた大いなる目標であったが、終わってみれば何のことはなく、割と醒めて振り返る自分に気づく。

日本地図に引いたマジックの線を眺めてみても、本当にこの自分がしたことなのだろうか…と、他人の所業を見る気持ちで捉えている。
過去と切り離し、一区切りをつける意味でも、2年間にわたったこの旅のチャレンジについて総括してみたい。
これから徒歩縦断を目指す人々に、少しでも参考になれば幸いである。

★2020年の総括については以下参照
  日本縦断徒歩の旅~94日間の旅を終えて


【これまでの経緯】
何度も書いているが、当初は定年を迎えた2020年3月に九州佐多岬を出発し、東京オリンピックが始まる7月末に宗谷岬に到達する計画で進めていた。
しかし、航空機のチケット手配まで終わっていた出発直前に、コロナ感染対策として政府による緊急事態宣言が出され、計画の中断、そして延期となってしまった。
私が住む岐阜県は長期のまん延防止施策に入り、他県への越境自粛などままならぬ状況に。
コロナの収束も含めて、度重なる緊急事態宣言が続く先が見えない状況の中で、佐多岬から宗谷岬への一筆書きによる縦断のチャレンジは諦めざるを得なかった。

苦肉の策としてとったのが、自宅近くを通る中山道のウォーキングである。
当初は延期となった縦断の旅の足慣らしだったが、東西に続く岐阜県内の中山道の完歩を目指したくなり、更に緊急事態宣言やまん延防止施策の停止に合わせて、長野県、滋賀県といった東西の隣県へ歩を進めていった。
気づいたときには150㎞以上を歩いており、そのまま歩を延ばせば、日本縦断の線につながると思うようになってきた。

日本列島に一本の線を引く一筆書きによる縦断はできなかったが、いつしか縦断の夢は、西は佐多岬、東は宗谷岬を目指す目標に変わっていった。
そして、宗谷岬を目指す東日本編は、2020年、9月25日に苫小牧に到達。
時期的に宗谷岬までの残りの400㎞は厳しいと判断し、翌年に持ち越すことに。
佐多岬については、同年11月18日に到達。

結果的に2020年のチャレンジは、佐多岬から苫小牧までの2400㎞をのべ94日間をかけ終了した。

しかし、東京オリンピックも延期開催となり、満を持してチャレンジする予定だった2021年、解除されない緊急事態宣言に阻まれ、宗谷岬を目指す400㎞の旅は実現できないまま終わってしまった。

そして、【withコロナ】の風潮が浸透し始めた今年2022年。
収束が見えない相変わらずのコロナ禍であったが、2年越しのチャレンジのスタートを切ることになった。

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苫小牧~宗谷岬へ

【天 候】
漠然であるが、梅雨がない北海道の6月~7月は寒くも暑くもない爽やかな晴天の下、楽しく歩ける一番の好適期だと思っていた。
しかし、これが想定外の不安定な天候に悩まされることになった。
苫小牧をスタートした6月28日から3日間は、連日の雨にやられてしまった。
梅雨前線が北上し、本州が相次いで例年より一ヶ月以上も早く梅雨が明け、太平洋高気圧に押し上げられた前線が北海道から東北北部に停滞する気圧配置になるというパターンである。

私が苫小牧からスタートを切る一週間前から北海道南部は不安定な天候が続いてた。
そして、出発した私は、たちまちその“餌食”となり、梅雨時のような蒸し暑い雨の中、大型トラックの水しぶきを浴びながら国道を北上することになった。

北上するにつれ、梅雨前線とは縁が切れたのか、スタートして4日目から12日目までは行動中は一度も雨にやられることなく歩くことになったが、今度は一転して暑さとの闘いとなった。
気温は22度~26度と快適な気温にみえるが、留萌から稚内までの日本海側を歩くルートは絶えず熱中症のリスクを背負って歩いた。
折りたたみ傘を差し、水に浸したタオルを首に巻き、休憩ごとに大量の水を飲むことで対処をした。

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人家が途絶えると強い日差しをさえぎる場所もなく、時折出てくる屋根付きのバス停が砂漠のオアシスのように思えた。それさえもないサロベツ原野では折りたたみ傘で日陰を作って紫外線から身を守った。
また、水分補給も切実な問題で、20~30㎞に渡り売店や自販機がないサロベツ原野では、常時ペットボトルの水を4本担いで歩いた。

稚咲内や抜海でお世話になった宿のご主人も話していたが、今年は例年になく夏の訪れが早く、7月の初めに利尻山の雪がほとんどないのは初めてだという。
また、エアコンや扇風機をこの時期に使うこともなかったが、今年は夜も寝苦しく、ずっとTシャツ一枚で過ごせているらしい。

確かに、3日間テントで幕営したときも、寝苦しくてシュラフに入ることもできず、腹にかけるだけで夜を過ごした。

今振り返ると、温暖化が進んでいるこの国では、もはや北海道といえども“涼しくて快適な”土地とはいえないかもしれない。
後半は熱中症の一歩手前まで追い込まれ、血尿も出る事態になった体調を鑑みると、この時期のチャレンジは厳しかったといえるかもしれない。

【ルート】
苫小牧から宗谷岬を目指すルートは、一昨年、苫小牧で中断した時にほぼ心に決めていたルートである。

縦断の先達からの情報では、北竜町から留萌に通じる美馬牛峠を越える国道233号線はクマのリスクが高いことが懸念材料にあり、熊鈴をザックに下げて突破することになった。
しかし、旅を続けていくうちにクマについてはサロベツ原野のほうがはるかにリスクが高いことが分かった。稚咲内から抜海付近にはクマの目撃情報の看板が立ち、私が歩いたその日にもクマが目撃されているという状況だった。

ただし、日中にクマと遭遇することは稀であり、クマの目撃は深夜から早朝にかけてが多いようだ。海の塩を舐めにくるという説もあり、サロベツ原野では海岸沿いの国道を横切ることで目撃されているという話を聞いた。

いずれにしても徒歩や自転車の旅人は、クマと遭遇しない時間帯の行動自粛と、熊鈴の携行は必須といえそうだ。
私は、熊鈴の他にラジオを鳴らしたり、自然界には存在しない音という理由でクマが嫌がる(?)、ペットボトルを潰す音を絶えず発しながら歩いた。

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天塩町から稚内までのルートをどこにとるかは少し悩んだ。
過去の縦断者の多くが国道40号線を豊富町を経由して稚内市街地に出る内陸ルートを選んでいる。
しかし、サロベツ原野の魅力が勝り、私は日本海側を歩く道道106号線を行くことにした。

60㎞にも及ぶこのルートはわずかな宿泊施設を除くとキャンプ場もなく、売店や自販機もほとんどないという厳しいルートだったが、地平線がどこまでも続く絶景を見ながら一人歩いていくロケーションに魅了された。
2800㎞に及ぶ列島縦断の中でも印象に残るルートとなった。

【宿 泊】
12日間の日程のうち、3日間をテントで幕営し、9日間をビジネスホテル、旅館、民宿を利用した。
初山別みさき台公園キャンプ場は日本海と利尻島が見える絶景にあり、しかも無料。 公園内には温泉施設もあるという素晴らしいロケーションだった。
日程に余裕があれば何日でも滞在したいところだった。

天塩から稚内の日本海側にはキャンプ場がなく、宿泊施設を利用するしかないが、コロナ禍にあって宿泊客の人数を制限しているのが厳しい。予約が取れなければルート中でのビバークとなるが、食料や水の確保ができないため、すべて天塩町で確保して担いでいくしかない。
もっとも、稚咲内のパーキングと抜海の『こうほねの家』を除いてビバークできそうな場所もないので、宿泊施設が確保できなければこのルートを歩くことは難しいと思う。

また、稚内から宗谷岬までの間には『ふれあいの森キャンプ場』があるが、宗谷岬までは24㎞の距離がある。
私は事情により稚内市内で宿泊し、宗谷岬を狙うことになったが、本音を言うと岬にもっと近ければ嬉しいところだ。

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今回はテントを背負っての旅となったが、ルートを通して宿泊施設の確保ができれば、軽量での歩き旅は可能だったと思う。
しかし、歩き旅の性格からか、天候、体調等で計画通りに進まないことを考えると、宿の予約はどうしても直前になってしまう。

その日に宿が無くて野宿というリスクもありうるので、シュラフなどの最低限のビバーク用具もあったほうがいいかもしれない。
一度チャレンジしたかったが、屋根付きのバス停も国道沿いにはある。
クルマの騒音が気になるところだが…。

【マメ対策】
2020年の旅ではさんざん苦しんだ足のマメであるが、今回400㎞を歩いてもほとんどできなかった。
北海道を歩く直前に、1週間の旧東海道を歩く旅を行ったが、その旅で実験的に試した足の保護クリーム『プロジェクトジェイ1』の効果が大きかったと思う。
出発前に足の裏と指の間に入念にクリーム刷り込み、マメができやすい部分にはテーピングを行って歩いたが、マメができることなく歩き通せた。

また、シューズはモンベルのトレイルランニング用を使用したが、足にフィットして大変歩きやすかった。これもマメの防止に効果を発揮したように思う。
これまでの旅では、マメができやすい体質だと思っていたが、保護クリームとシューズによって回避できることが分かったことが、今後も長距離の歩き旅を実践する上で収穫となった。

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【アクシデント】
旅に出て10日目を迎えた7月8日、稚内市内で休憩中に血尿に見舞われた。
肉眼ではっきりと分かるレベルであり、同時に発生していた左足すねから足首にかけての痛みに関連付け、素人判断ながら横紋筋融解症を疑った。

病院を紹介してもらうために交番に立ち寄り事情を説明したところ、稚内市立病院へ救急搬送されることになってしまった。
まさに私にとっては青天の霹靂の出来事であった。

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病院で検査したところ血尿が認められ、医師からは安静と旅の中断、帰宅後に泌尿器科を受診するように勧められた。
翌日、肉眼的には血尿が改善したと判断し、あと28㎞に迫っていた宗谷岬への最後のチャレンジを行うことにした。
帰宅後、病院の泌尿器科を受診し、尿検査とエコーを行い、検体は病理検査に回され、現在精査中である。

足の痛みについては、一昨年の東北での右足の筋肉痛に酷似しており、その時は旅を継続することができずに中断することになってしまったが、今回もう一日、宗谷岬ゴールまでの日数がかかったとしたらおそらく歩くことはできなかったと思われる。
稚内から宗谷岬までの28㎞は、文字通り歯を食いしばっての足の痛みとの闘いとなった。
血尿もそうだが、最後の一日だから我慢もでき、無理を承知でチャレンジしたと思っている。

【106日間を振り返って】
日本列島を縦断した2800㎞、106日間の旅は振り返ってみるとあっという間の出来事だったような気がする。
その日の体調や宿泊施設の予約によって一日30㎞程度を目途に歩いたが、長旅に体が順応しリズムよく歩けるようになると、40㎞を越える行程もふつうにこなせるようになってきた。

全体を通して、名所や観光施設にほとんど立ち寄ることなく、黙々と歩くストイックな姿勢を貫いてきたので、傍から見れば面白味もない旅に映ったかもしれない。

しかし、そんな中にも季節の移ろいを花や樹木、昆虫、風の冷たさ、暑さで感じてきたし、歩き目線での発見も多々あった。
僅かだが人との触れ合いもあり、大げさに言えば、日本の今の姿を目に焼きつけながらの旅に仕上がったように思っている。
最南端の佐多岬と最北端の宗谷岬を、どちらも旅のゴールとして踏むことができたことは素晴らしい体験であった。

日本列島縦断の歩き旅は、私にとってこれから始まる終活の一ページであり、思いっきり贅沢な日々の積み重ねであったと思う。

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[ 2022/07/15 ] 日本縦断徒歩の旅 | TB(0) | CM(4)

改めてお疲れさまでした

こんちは
一本の線で描けば簡単に見えるけど相当なド根性がないと達成不可能な偉業だと思います。
神戸の西の外れも歩いておられた記事が記憶に残っていますが俺ぃらの場合、神戸→明石だけでも22時から翌2時まで掛かっています(ただの酔っ払った勢いですw)

お疲れさまでした、まずは治療を優先なさってください。
[ 2022/07/15 22:20 ] [ 編集 ]

日本列島を縦断した2800㎞、106日間の旅

>日本列島を縦断した2800㎞、106日間の旅は振り返ってみるとあっという間の出来事だったような気がする。

○すばらしい!感動しました。

 小生は、学生時代、東北1周、野宿自転車旅行をしたことがありますが、その感動は今でもわすれません。特に、最後の一日は意外と体が軽かった感じでした。
[ 2022/07/16 10:52 ] [ 編集 ]

うぞうむそうさへん

コメントありがとうございます!
神戸を歩いたのは一昨年で、ずいぶん昔のような気がします。
マスクを着けて歩いた記憶がありますが、あれからずいぶん経ったのにいまだにマスク生活だというのがやり切れませんね。
[ 2022/07/17 10:25 ] [ 編集 ]

ささげくんさんへ

コメントありがとうございます!
自転車で東北一周ですか。
それも野宿で。
素晴らしい体験ですね。
今回の旅では何人かのチャリダーに会いましたが、いつか自分も自転車の旅がしたいと思いました。
ひとそれぞれの楽しみがある旅は良いですね。
[ 2022/07/17 10:28 ] [ 編集 ]

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