13日間の徒歩の旅から帰宅して、体調を回復するためにゴロゴロしていた7月後半。
何もすることがないので、映画と読書でひたすら自宅にこもっていた。
こんなのんべんだらりとした生活は、定年前に思い描いた理想だったはず。
しかし、何日も続くと飽きてしまう。
何かしなければいけないなぁ…という気持ちがムクムクともたげてくる。
さぁ、そろそろ動くとしますか。
さて、7月の読書の収穫はというと、ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』。
これにつきますね。
軽快なアメリカンポップの、ノリ。
それでいて心臓をわしづかみされそうな、キレ。
この作家、思わぬ発見でした。
7月の読書メーター読んだ本の数:7
読んだページ数:1814
ナイス数:332
ソ連兵へ差し出された娘たち (単行本)の
感想ソ連兵の暴虐ぶりを憎む前に、なすすべもなく坂道を転がるように不幸へと進んだ愚かな背景に腹が立たずにいられなかった。
被害者女性から「男が始めた戦争」と言わしめる端的な表現に、古来から続く男尊女卑のもと虐げられてきた女性たちの声を聴いた気がした。
人柱となる強姦を「接待」という言葉に置き換えた歪曲した卑劣な表現は、裏取引の事実を隠そうとする男たちの犯罪である。
奇しくも岐阜県の黒川開拓団は私の自宅からほど近い地域から送出されており、この事実を余すことなく実名で記した著者の信念と、証言者たちの勇気に真実を見た。
読了日:07月23日 著者:
平井 美帆
怪虫ざんまい 昆虫学者は今日も挙動不審の
感想たかがムシの話というなかれ…これほどまでに昆虫の世界を掘り下げて、超マニアックかつ魅力的に語った作品はないのでは。少年の頃、胸をときめかせて読んだファーブル昆虫記を思い出してしまった。
著者は研究者以上に虫屋なので、新種の発見にかける情熱もマニアなら思いっきり共感ができる。
地下水にいる特殊な種を探して、井戸ポンプを連日くみ上げるその労力は常人には理解しがたいが、その苦労が報われるあとがきを読むと、彼らのような研究者がいたからこそ、謎が解き明かされ世界が広がると思わずにいられない。
軽快な文章にも惹き込まれた。
読了日:07月22日 著者:
小松 貴
天使突抜367の
感想【てんしつきぬけ】と読む。京都には難読や変わった地名が多いが、これもその一つ。
本書は大正から昭和初期に建った長屋をひょんなことから買った著者が、気ごころ知れた仲間たちとリノベーションする過程を綴っている。
興味深いのは、建具や電気器具一つにもこだわった家づくり。大量の着物コレクションを収蔵する箪笥にもセンスの良さと、歴史の重みを感じた。これを見ると古き良きものが現代と融合する京都の魅力を改めて感じずにはいられない。
欲を言うと、間取りや室内の画像がもっとあれば、家づくりのイメージがさらに伝わったと思う。
読了日:07月21日 著者:
通崎 睦美
掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集の
感想心の躍動を覚える文章に出会いたい…これがために長らく読書に勤しんでいる。この作品には、読書好きの魂を揺さぶる魅力的かつ不思議な力がある。
ポップなジョークやユーモア、そして緩急をつけた比喩やストレートな表現に、類まれな才能を見た思いだ。
大好きなC.ブコウスキーを初めて読んだ時の衝撃とドキドキ感の再来をもって読了することができたのは、ここ数年来の収穫である。著者は生涯に76の短編を書いたという。
死後10数年も一連の作品が埋もれていたことは信じがたいが、それを世に出した訳者の、切れ味するどい訳も評価したい。
読了日:07月21日 著者:
ルシア・ベルリン
瓦礫の死角の
感想『蠕動で渉れ、汚泥の川を』の続編にあたる表題作は、勤めていたレストランを追い出された後の、堕落した日々を描いている。
後年に亘って支配続ける救いようがない自己中で懐疑的人格が、17歳にしてパワーを増しているのが垣間見える。
そんな生活の中でも文学へ惹かれていく過程が不思議この上ない。私小説家としての著者を形成する早熟なエピソードである。
収穫は同時収録された『崩折れるにはまだ早い』。師と仰ぐ藤澤清造の晩年を描くが、最後まで読んでそれが分かった秀作。こうした作風にチャレンジしたことが、ファンとして嬉しい。
読了日:07月20日 著者:
西村 賢太
百花の
感想百合子の過去や棄てられた泉の生活実態など、作中では触れられていないのでいくつかの謎と不満は残るが、中盤から後半にかけてキーワードとなる『半分の花火』の記憶の意味を解き明かしてくれたことが救い。
認知症は罹る本人も家族も、辛くやりきれない。百合子が在宅介護になることもなく施設に入れたのはラッキーだと思う。
これがないとどろどろした介護現場の描写が続き、作品の狙いがあらぬ方向に行ったかもしれない。
表面的な親子関係が百合子の認知症により溶解し、修復されるベースまで発展していくが、それもほんの一瞬のこと。見事。
読了日:07月14日 著者:
川村 元気
52ヘルツのクジラたち (単行本)の
感想淀みなく流れる文章と、巧みな構成力に舌を巻いた。
主人公の貴瑚やアンさん、愛といった多様なキャラクターが登場するが、誰もが心に傷を持って懸命に生きており、その閉塞感がとても辛く感じた。
人がうごめく世界にあっても、誰にも相手にされない孤独ほど辛いものはなく、その叫びが届かないのが真の孤独かもしれない。
原野にたった一人残された孤独とは違う、心の虚無感と一人ぼっちの恐ろしさを描き切った努力作だと思う。
それだけに前半の閉塞感から最後の解放感に至る筆運びは見事というほかない。
読了日:07月12日 著者:
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