気象庁が今年の梅雨明け日の見直しを検討しています。
どうやら“勇み足”だったようです。
まったくお笑いですね。
それでなくても、最近の目まぐるしく変わる天気の予報はハズレまくっています。
雨雲レーダーを参考に刻一刻と変わる予報を確認していますが、それすらハズレっぱなし。
それにしても、この夏の天気の不順なことよ。
8月は雨が降らなかったのがほんの数日。
毎日のように、降ったり止んだり…晴れたり、曇ったり。
今月もこのままいくと同様な、まだまだ長雨が続くみたいです。
願わくは、カラッとした秋晴れが見たい。
さて、8月の読書。
収穫はなんと言ってもルーシー・アドリントン著『アウシュヴィッツのお針子』。
これに尽きます。
戦後80年近く経っても、新たな事実が出てくるナチスの戦争犯罪。
その業の深さに、決して晴れることがない深い闇を見た思いです。
8月の読書メーター読んだ本の数:10
読んだページ数:3280
ナイス数:528
87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らしの
感想巻末の写真を見て、その若さに驚く。
しゃんとした背筋は、私の老父と同じ87歳にはとても見えない。
iPadを操り、YouTubeで日々の暮らしぶりを発信する。若いはずだ。
頁を開くまでは、古びた団地でひっそりと暮らす孤独なお年寄りの姿をイメージしていたが、最後まで読んで、凛としたその生き方に深く感動した自分がいた。
こんな風に年を取りたいと思わずにいられなかった。
55年に亘って住んでいる団地は著者にとって体の一部であり、共に人生を刻んだ同志なんだろうか。
今を愉しみ「この部屋で死ぬ」と言い切れる気概に心を打たれた。
読了日:08月27日 著者:
多良 美智子
老後レス社会 死ぬまで働かないと生活できない時代 (祥伝社新書)の
感想早期退職し、今年から始まった年金暮らし。日がな一日好きな本を読んで過ごしている…こんな自分は、本当に恵まれていると思う。
本書には、死ぬまで働かないと生きていけない高齢者や、将来の予備軍ともいえる非正規雇用にあえぐロスジェネ世代、職場で居場所がない定年間近の人々の悲痛な声が綴られている。
なんでこんな国になってしまったんだろうと考えつつ、自分は単に運が良かっただけだと思ったりもする。
本来、祝福され喜ぶべき長寿化が、不安をもたらし、本人、家族にとっても生きていくうえでの人生最大のリスクになっていく。
社会保障制度の砦である年金の危機的不安を招いたのも、わが国が人口問題への取り組みを怠ってきたからに他ならない。
金権にまみれた政府や弱い野党が本腰を入れてこのツケを払うことができるのか。
「一億総活躍」のスローガンを掲げ、死ぬまで働くことが唯一の解決策という情けない政策を推進する国力に、未来を見いだせない暗闇を感じた。
老年人口が最多となり日本社会が最大の危機に直面する2040年代、それを生きるわが子、わが孫の世代があまりにも不憫である。
読了日:08月27日 著者:
朝日新聞特別取材班
自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)の
感想謎解きのストーリーは古典的だが、最先端のメディアをちりばめたプロセスがいにも現代的で、その印象を覆している。
スマホやPCを使った友達アプリやSNS、画像編集といったデジタルコンテンツが盛り沢山。ITに弱い世代の読者層はとっつきにくいかもしれない。
それにしてもイギリスの高校生は早熟。クルマも運転するし、飲酒、ドラッグなんでもありだ。
一方で、EPQ資格という自由研究が学校教育の一環として推進されている背景は先進的で、旧態依然の日本も参考にしたいところ。
謎解きが進むに連れ、成長していく主人公の姿も心地よかった。
読了日:08月25日 著者:
ホリー・ジャクソン
被差別部落の民俗と芸能 日本民衆文化の原郷 (文春文庫)の
感想生業と居住環境に関わる厳しい差別が原点にある部落問題の中で、人間としての生が輝く側面、それが伝統的な民俗である民衆文化だ。
我が国の至宝ともいえる最高の芸術の域まで高めた歌舞伎や人形浄瑠璃も、その原点には差別されてきた人々の生業からなっている。
本書で紹介されたデコ舞わしや鵜飼も然り。田畑や漁業権を持たぬ搾取されてきた人々の生きていく糧として生まれ、伝統に発展したものである。
著者は差別と抑圧に闘った歴史を“豊饒の闇”と書く。その的を得た表現に感嘆。
幼き頃の正月の風物詩だった獅子舞の姿を、もはや見ることはない。
読了日:08月20日 著者:
沖浦 和光
アンネ・フランクの密告者 最新の調査技術が解明する78年目の真実 (「THE BETRAYAL OF ANNE FRANK」邦訳版)の
感想一字一句読み込むスタイルなので、470頁の大冊はしんどかった。
その割に「やっぱりなぁ…」で終わってしまった結論が歯がゆい。
アンネ・フランクの隠れ家を密告したのは誰なのか…という謎を現代の専門家チームによって多方面から調査し、核心に迫っていくプロセスは執念の見せ場ともいえるが、証人のほとんどが没し、事件が風化している現状ではその努力を確証につなげることができず憶測に留まってしまう。
これが歯がゆいのだ。78年前の真実の解明に辿り着けることができるのは、これからもこの先もまったくの偶然でしかないだろうと思う。
読了日:08月16日 著者:
ローズマリー サリヴァン
昆虫学者はやめられない: 裏山の奇人、徘徊の記の
感想昆虫のみならず、カラス、ヘビ、リス、クモ等のウンチクが詰まり、生物全般の知識と守備範囲の広さに驚く。
著者が単なる昆虫学者で収まらないのが、“南方熊楠の再来”と言われるゆえんか。
本書をもって、昆虫学が新種の発見と分類だけにとどまらず、一種ごとの生態の解明という気が遠くなるような地道な研究の上に成り立っていることを知ることができたのは収穫。
昆虫少年だった私にとって、流れる汗をいとわず、捕虫網を振り回して里山を駆け回った幼い頃の遠い夏の日を、郷愁を感じつつ思い出すことができた。
読了日:08月12日 著者:
小松 貴
マイホーム山谷の
感想東京を旅すると山谷のドヤによく泊まる。
受付では「ここは普通の宿と違うからね」と言われる。3帖一間で風呂、トイレ共用。連泊してもシーツ替えなし。
何と言っても宿代は安いし、慣れてしまえばそれなりに快適である。貧乏ツーリストに人気があるのもうなずける。
山谷で路上生活者を見かけないのはドヤの存在が大きいと思う。
ホスピス「きぼうのいえ」は社会的弱者が集まる山谷の象徴である。民間人である山本夫妻がそれを立ち上げ、運営のシステムを構築したことは称賛の何物でもない。
なぜ国は動かず民間なのか。この国の福祉行政のふがいなさを改めて実感する。
弱者を助けたいという純粋で高い志が、弱者との接触が深まるたびに自らの精神を病んでいく山本氏の姿が哀れというほかない。
同志であった妻も同様。本書によって山谷がもつ“業”と深い闇を見た気がした。
読了日:08月08日 著者:
末並 俊司
すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集の
感想前著『掃除婦のための手引書』の興奮と感動が冷めやまないうちに手に取った。
期待を裏切らない濃密に詰まったパッケージに今回もノックアウト。こんな文章が書ける才能が、腹が立つほど妬ましい。
訳者あとがきに著者の魅力について触れている。
情景を最短距離で刻み付ける筆致、ときに大胆に跳躍する比喩、歌いうねるリズム、ぴしゃりと断ち斬るような結句…まさに同感。
それにあえて付け足すなら、「併せ持つ危険な中毒性」。
一度読んだらその魅力に囚われてしまうルシア・ベルリンを解毒するには、余程の対抗馬が必要となるだろう。
読了日:08月06日 著者:
ルシア・ベルリン
定年入門の
感想60歳で定年後、再雇用された会社を辞めて2年が経った。
今更『定年入門』ではないが、この作品に出てくる人々がどんな生活を送っているのか興味を持って読んだ。
総じて言えるのは、皆一様に趣味に、自己啓発に、ボランティアに、仕事に、アクティブに生きていること。
私のようなのんべんだらりと日々を消化している輩はいない。
【きょういく=今日行く】と【きょうよう=今日用】といったスケジュールを埋める作業は私には重苦しい。
これでは定年前と何ら変わらないじゃないか。
それが嫌で会社を辞めることを指折り数えて待っていたのだから。
読了日:08月03日 著者:
高橋秀実
アウシュヴィッツのお針子の
感想ホロコーストの記憶が風化していくなかにあって、新たな事実を掘り起こした労作である。
今のところ今年度最高のノンフィクションと自薦したい。
人間の尊厳ともいえる衣食住を奪ったアウシュヴィッツの収容所生活の中で、生き延びるためにナチス親衛隊の妻たちを着飾る衣服を作る、縞模様のボロ着をまとった囚人たち。
理不尽なそのギャップに怒りが沸騰する。
解放後にボロ服を脱ぎ、服を変えたことで「また人間になった」という言葉は計り知れないほど重い。
また、解放後の“死の行進”の始終が、多くの証言のもとに記されていることも特筆できる。
読了日:08月01日 著者:
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