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花村萬月著 『百万遍』

花村萬月は、それほど好きな作家でもない。
人相風体も嫌いな部類に入る(笑)。
振り返ってみても、代表作の『ブルース』以外、真面目に読んでいない。
しかし、気になる作家の一人だ。
『百万遍』は、何かのインタビューで、この作品が「俺の代表作になるかもしれない」という著者のコメントをみて興味が沸いた。作品自体は、著者が辿った私小説の体裁をとっているようだ。
現在、『青の時代』と『古都恋情』の二部作が発行されているが、ハズレを想定すると新刊で買うのも勿体ないので、オークションで落とすことにした。
二部作上下巻を2月の中ごろから読み始め、半月かかって読了した。
内容をひと言で表現すると、“爽やか”。
著者が得意なテーマ…暴力やドラッグ、性、音楽、自堕落且つ破天荒な生き方…ディープな描写が目一杯溢れている割には、読後感は爽やかなのだ。
おそらく、主人公の惟朔を自分の少年時代に投影しながら読んでいたことにもよるが、爽やかさを感じるのは、破天荒な生き方の裏に見え隠れする一本筋が通った生真面目さや、素直に女性にモテようと努力する主人公を通して、緊張と弛緩の両方を見ることができるからだろう。
一方で、主人公の危険でハチャメチャな生き方を否定しつつも、その裏には羨望と憧れをもって肯定し、無意識に応援してしまうからだろうか。
健全な環境のもとで、全うな生き方をしてきた人には、すぐには感情移入できない隔たりを感じるかもしれないが、少年から青年へ、あるいは子供から大人へと変わる不安定な内面の屈折を、見事に描写していることがこの作品の魅力かもしれない。
わざとなのか、妙に稚拙な表現やフレーズが随所に出てくるのが鼻につくが、それを除いても、同時代を生きてきた我々中年オヤジや、女性が読んでも、きっと夢中になると思う。
五木寛之著『青春の門』とは違った、青春大河小説の誕生である。

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[ 2010/03/03 ] 読書 | TB(0) | CM(0)

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